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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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64.貴族裁判 57


 フィーナとマサトの背後には、ニルディアートが『ふむふむ』と納得顔で顎に手を当てうなずいていた。


 ――いつの間に。


 カディス・フォールズの側にいたと思っていたニルディアートが、突然背後に移動したのに、フィーナとマサトは驚く。


『そんな思惑だったのかもね』


 納得顔でうなずきながら、ニルディアートはパチンと指を鳴らした。



   『邪魔なフィーナを、公の場で排除したかったんだろーな』




 ――と、マサトの声が場内に響く。


 空から降ってきたようでありながら、四方八方から聞こえる、出所不明の音声として流れた。



   『ダルメルの薄墨インク募金で、フィーナは貴族籍に広く知られただろ。

    国外渡航で貴院校退学となったとしても、世間が周知するのには時間がかかる。

    国外渡航に第二王子が同行してたのを利用して、上級裁判で訴えて――裁判の傍   聴席に居る参加した貴族籍に、フィーナ退学を広めたかったんだろ。

    最初に知った人数が多ければ多いほど、多数への情報伝達は早いからな。

    ……で。

    あわよくば、無理矢理同行したのに迷惑をかけてしまう罪悪感から、王位継承権   を返上すると言い出す可能性も視野に入れてたんじゃねーの?』

  


 マサトがつぶやいた憶測が、ほぼそのまま場内に流れた。


 蒼白となるフィーナとマサト。


 あくまでマサトの憶測だ。


 それがこのように流れては、それが真実と、場内の人々に誤解されかねない。


 裁判官、傍聴席の貴族籍は場内に響いた声に驚き――内容にも驚いた。


 王位継承権の下りは、ひときわざわめいた。


 声の主は誰か――。


 真偽次第ではカディスへの不敬罪も考えられる。


 ざわめく場内の声を聞きつつ、ニルディアートはカディス・フォールズに詰め寄ろうとした。


 真偽を確かめるために。


 真実を人々の前で明らかとするために。


 そのニルディアートを、ゲオルクが諫めた。


「フォールズ侯爵の真意如何で、処罰が変わるわけでもございません。

 現状、わかりえる部分での処罰でよろしいかと――」


 礼をとって告げるゲオルクに、ニルディアートは不満顔を向ける。


『君はそれでいいの?』



   自分の行いには責任をとるべき。


 

 精霊神達の理念だ。


 カディス・フォールズの真意を暴こうとするニルディアート。


 フィーナを標的としたカディスを、ゲオルクは警戒しているはずだ。


 カディスを糾弾しようとしたニルディアートを止めた、ゲオルクの気持ちがわからず、ニルディアートは問いかけたのだった。


「真実は知るべき者が知っていれば良いと、私は考えておりますゆえ。

 名誉毀損の訴えを起こしたのは――孫への被害を防ぐためにございます」


 礼をとったまま告げるゲオルクを、ニルディアートは不満顔でしばらく見つめていたものの、息をついて『わかったよ』と引き下がった。





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