表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
688/754

61.貴族裁判 54


『この子はこれまでの寵児ヴィートと似てるね』


 つぶやいて、未だ状況を飲み込めていない三つ編みの女性に、ニルディアートは手を差し伸べた。


『よろしく。

 リディア・キールソン』


「え――?」


 明かしていない名を呼ばれ、三つ編みの女性――リディアは驚きに目をまたたかせた。


 何がどうなっているのか。


 状況を理解できないリディアだったが、ニルディアートに加護されると同時に、感覚の変化を感じていた。


 加護の宣言と同時に、鮮明に見えるニルディアート、場内を俯瞰視できる感覚――。


 何より――。


 恐れの対象だった貴族籍の人々が、矮小に思えた――。


 リディアが感覚の変化に戸惑う間、ニルディアートはシアに怒られていた。


「ですからっ! 勝手なことは控えてくださいって言いましたよね!?」


『アグロテウスも同じことしてるのに、ボクだけ当り、強くない?』


「アグロテウス様にも注意致しましたっ! 

 それを知った上でされたのですから、対応が激しくなってもいたしかたないでしょう!?」


『思わないー』


「なっ……っ!!」


 リディアに背後から抱きつき、だらりともたれかかる体勢をとるニルディアート。


 肩をいからせるシアに、淡々と口を開いた。


『ボク、言ってたよね?

 政に関わらなくてもいいから、内情は把握しといてって。

 それって公表されてる部分だけじゃないよ?

 裏を含めた部分もだよ?

 合わせて、過去の判例も把握しといてって言ってたはずだけど。

 ゲオルク、カシュート。

 これは君たちの仕事だよね?』


 シアは知らなかったようで、戸惑いをにじませている。


 ニルディアートの言葉を受けて、ゲオルクが礼をとった。


「名誉の毀損に関しては、調べておりました」


 ゲオルクは告げると、裁判所出入り口に控えていた伴魂のオズマをニルディアートの元へ向かわせた。


 オズマからゲオルクの情報を伝え聞いたニルディアートは、渋面を張り付かせる。


 過去の判例から、フィーナも訴え可能との判例を見つけているが、裁判官がそれらを把握していないとは思っていなかった。


 ゲオルクとカシュートの仕事は認めつつ、詰めの甘さにニルディアートはため息をつく。


『ボクが直に加護を与えたワケ――わかるよね?』


「彼の者の知識を得るためかと――」


『そう――』


 ゲオルクの言葉を肯定したニルディアートは、裁判席を見た。


 ――己の知識不足を恥じない者達を。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ