51.貴族裁判 44
マサトはマサトで『は? 俺?』と小声でつぶやいた。
『あんたのせいで契約できなかったじゃないっ!』
「契約!?」
驚いたフィーナが声をあげる。
そんな話は聞いてない。知らぬ間に何をさせられようとしたのか。
慌てるフィーナに、シアがのほほんとした表情で緩く手を振って説明した。
「ご心配なく。
百利あって実害ゼロなものです。
守護できなかったので、機嫌が悪いのですよ」
「しゅ……ご……?」
「お守りする力です。
守護の関わりで、あの方との繋がりもできますから……やっぱり、伴魂が繋がり部分もってっちゃうと、横やりできないですか」
『だから――っ。
赤子の時に唾つけてたのに――っ!』
「リューネさま。言い方言い方。
お姫様、引いてますって。」
『くぅ~~~っ!』と拳を握りしめて悔しがる青髪の女性に、シアが注意する。
シアの言葉にハッとした青髪の女性は、戸惑うフィーナに『違うのっ』と慌てていた。
『生誕時に、祝福を与えていたの!
歴代次期当主候補者にはみんなにしてたことよ!
――ってかディア!
どさくさまぎれに、何横やり入れようとしようとしてんの!?』
『リューネの次は僕だから――』
くせのある緑髪のボブの長さの女性は、キュッと、フィーナに抱きついた腕を強めた。
『リューネがダメでも、僕だったら守護できるかもしれないから試してみた。』
『私ができなかったら、みんなダメに決まってるじゃない!!』
ディアと呼ばれた女性とリューネと呼ばれた女性。
リューネはキャンキャン声を上げ、ディアは淡々と返している。
二人のやりとりに誰もが呆気にとられる中、フィーナも呆気にとられながら――心情、穏やかではいられなかった。
(ちょっと待ってちょっと待って――っ!)
自身を落ち着かせようとしつつ、混乱する。
二人がかわす名、身体的特徴。
時同じくして出現した二人の男性――。
『なるほど。【異界者】か』
告げたのは、ブラウンの短髪と同色の瞳、筋肉質の体格の男性だった。
上半身は肌の上に焦げ茶の薄布ベスト、腹部から下は、薄布のゆったりとした白のズボンを履いている。
彼も宙に浮いている。
フィーナの背後からマサトを興味深そうに見下ろしていた。
声に反応してマサトは顔を上げて――硬直した。
茶髪の男性はしばらくマサトを見て『――ふむ』と顔を上げた。
男性が視線をはずすと同時に、マサトの硬直が解ける。
 




