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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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47.貴族裁判 40


「エルディナード公爵家は精霊に縁のある一族にございます。


 皆様の認識の齟齬は、訳あって、公の場を望まないエルディナード家の意志を汲み、精霊が術を施したためにございます。


 術と申しましても、効力は軽く、皆様方が経験されたように、きっかけさえあれば、すぐに解けてしまいます。


 ――では。


 陛下の承認も頂いたことですし、今後は「フィーナ・エルディナード公爵令嬢」として審議されますよう、謹んで申し上げます」


「しかし――そう急には――」


 戸惑う裁判長に、シアは冷たい笑みを浮かべた。


「『急に』とは、こちらのセリフです。

 密やかに暮らしていた者を、有無を言わさず表舞台に引きずり出しながら「困ったからナシ」はないでしょう?

 ――もちろん、貴族籍の方々同様、言われなき不名誉を講じられれば、相応の対応を致します。

 貴族籍が名誉を重んじると――皆様ご存じでしょうし」


 最後はカディス・フォールズを見て、シアは告げる。


 カディスは蒼白になった。


 机に置いた手を強く握りしめ、歯の根をかみしめる。


 フォールズ家は第九位上位貴族の侯爵家だ。


 家柄は、エルディナード公爵家に敵わないと明白だった。


 このままでは「名誉毀損」として、フィーナ親族から訴えられる――。


 困惑しながら、思考をフル回転させて、カディスは打開策を探った。


 裁判所内は、次々に明らかとなる事実にざわめいた。


 そうした状況を眺めていたゲオルクが、小さく息をついた後、口をひらいた。


「――カディス・フォールズ侯爵」


 静かな声は、場内に響いた。


「貴殿も、国を思っての今回の行為とお見受けする。

 事情を知らなければ、誤解するのも仕方なかろう。

 現状において、うかがう。

 我が孫――フィーナ・エルディナードは、貴殿が訴える、悪害ある者か」

 


   ことの始まりは、カディス・フォールズの訴えからだ。

   カイルをフィーナがそそのかし、利権を良いように使っている。

   ――と。



 沈黙が続いた。


 長い沈黙に、人々の密やかな声が聞こえ始めた段階で、カディス・フォールズは頭を垂れて低い声で口を開いた。


「……申し訳、ございませぬ。

 事情を知らず、勘違いをし――いらぬ御迷惑をおかけしました――」


 フィーナに非はないと、認める発言だった。


 場内はざわめき、被告人弁護席の面々は、一応に安堵した。


 カディス・フォールズが非を認めたので、ゲオルクは「名誉の毀損」の訴えは起こさなかった。


(――「終わりってこと……かな?」)




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