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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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36.貴族裁判 29


「フィーナ・エルド嬢の近しい人々は、異論あるようですね。

 ではカイル殿下。

 あなたはなぜこの結果に異を唱えないのです?」


 名指しされ、カイルは戸惑った。


 ――が。


 精霊教会シルニーファの女性に強い眼差しを向けた。


「私に非があり、フィーナ――エルド嬢に非はないと判決が出たとしてだ。

 その後、セクルト貴院校で過ごすエルド嬢に何の影響もないと、貴殿は思われるか?」


「はて」と、精霊教会シルニーファの女性は首をかしげる。


「エルド嬢に非は無いのですから、気にする必要はないかと」


「それで納得しない者がいるから、こうなっている」


 カイルの言葉を受けて、精霊教会シルニーファの女性は「――ふむ」とあごに手を置いて考えた。


「フィーナ・エルド嬢への言われ無き誹謗中傷から守る為、今回の判決を苦渋を飲んで受けいれた。

 ――とのことですか」


 カイルは何も言わなかった。


 返事が無いのが、肯定となる。


「なるほど、なるほど」


 と、精霊教会シルニーファの女性は数度うなずいて、にっこりと笑みを浮かべた口元でカイルに顔を向けた。


「清々しい愚か者ですね♪」


 うふふ♪


 ……と笑う精霊教会シルニーファの女性に、廷内がざわめいた。


「王子殿下に無礼なっ!」


 精霊教会シルニーファの女性への非難が次々と上がる。


 場内を埋め尽くさんばかりの怒号となったとき。


「――無礼はどちら?」


 精霊教会シルニーファの女性のものと思われる、静かな声が、廷内隅々に行き渡る。


 静かだが、喧噪の中でも誰しもの耳に、確実に聞こえるものだった。


 その声から、感情も伝わってくる。


 ――冷たい炎


 淡々とした口調の中に、静かな怒りが燃えさかっている――。


「無理に同行したのはカイル殿下。

 それを受け入れ、面倒を見た者へ鞭打ちますか。

 ――カイル殿下。

 今一度問います。

 あなたはなぜ、他国へ渡航されたのですか」


 精霊教会シルニーファの女性を非難する声は続いていた。


 その中でも、彼女の声はまっすぐにカイルの耳に届いた。


 その声からなぜか――彼女の意志を聞いたように感じた。



    真相の公開


  

 拉致されたアルフィードを救出しようとしたフィーナに同行して、アブルード国へ渡った。


 そのアルフィードは――王宮で拉致された。


 アブルード国におけるアルフィードの特異性は別の話として、カイルは、王宮の警備体制が非難されるのを――恐れていた。


 警備は万全だった。


 ――ただ、相手が悪かった。


 オーロッド・ウィグネード。


 彼に対処できる強者が、サヴィス王国にどれほど存在するか――。


 そう思ったとき、カイルは気付いた。


 王宮の警備の不備を追及されると思ったから、アルフィード拉致を大きな声で言えなかった。




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