34.貴族裁判 27
背後の気配に体が萎縮した。
フィーナはこくりと息をのんで――ゆっくりと振り返る。
精霊教会の衣服に身を包んだ二人が立っていた。
◇◇ ◇◇
フィーナの後方に立つ二人は、精霊教会の衣服をまとっていた。
同じように見えたが、先に現われた二人と、縁取る刺繍糸の色が違っていた。
一人は金色、もう一人は銀色。
先の精霊教会二人と同様、目深に被ったフードで顔が見えない。
口元が少し除く程度だ。
二人とも男性で、一人は三十代、もう一人は老齢で口ひげがのぞいている。
「二人は立会人です♪」
――と、先ほど声を上げた女性が、フィーナの後方にいる二人を、頬に人差し指をあて「うふふ♪」と首を傾ける。
「私たちも用件はございますが、後から割り込んだ身にございます。
そのあたりの分別は踏まえていますから、ご心配なく。
私どもの要件執行は、裁判後でかまいません。
けれども、このたびの貴族裁判。
開催自体、珍しきものにございます。
滅多に無い機会ですので、後述の為にも同席はお許しくださいませ♪」
言って、一礼する。
精霊教会に荘厳なイメージを持っていた者達は、精霊教会関係者の軽やかな口調に困惑しつつ、彼らの望み、言い分を受け入れた。
精霊教会関係者の来廷で、一番困惑したのはフィーナとマサトだった。
精霊教会がどういった組織か、わからないのが厄介だった。
フィーナは後方に立つ二人に、威圧感をおぼえた。
先に入廷した二人は、裁判官席に近い場所に用意されたイスに座っている。
後で入廷した二人も、先の二人近くを進められたが、断ってフィーナの後方に居続けた。
壁沿いに立って邪魔にならないようにしているが、フィーナは気になって仕方ない。
(――「見張ってる……のかな」)
(――『逃げられるわけねーのに?』)
この場から逃亡など、物理的に無理だ。
(――「そう、だよね……」)
だから余計、思惑がわからなくて困った。
ザイルが言ったように、精霊教会が国の有事だと判断したのなら。
(――「退学だけじゃ、すまないかもしれない……?」)
(――『だとしても。俺らが断罪される言われないだろ』)
(――「カイルを矢面に立たせるってこと?」)
(――『………………』)
カイルに矛先が向かないように、セクルト退学を受け入れようとしているのだが。
黙り込むマサトが、思案を巡らせているのを感じて、フィーナは口をつぐんだ。
精霊教会がどういった組織かわからない以上、考える手立てにも限界がある。
そのように困惑するフィーナ達と違い、カディス・フォールズは「運が自分に向いてきた」と思っていた。
想定外の精霊教会が登場しても、思いに変化はない。
カディスも「国の有事に精霊教会が表舞台に出てくる」との噂を知っている。




