表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
660/754

33.貴族裁判 26


 ザイルの説明を聞いて、マサトは眉をひそめた。


『――だから?』


 フィーナもマサトのつぶやきと同じ思いを抱いた。


 精霊教会シルニーファ関係者が来場して、何がどう変わるのか。


 カイルの伴魂へこちらの問い、感情は伝わっても、被告人関係者席に座る面々には届かない。


 カイルの伴魂から、場内の貴族籍が「希少」である精霊教会シルニーファ関係者に興奮しているのは伝わった。


『有名芸能人に会えたって感じか?』


「ユウメイゲイノウジンって何」


 こぼすマサトに訊ねるフィーナ。


 マサトから伝わる前世の映像で、フィーナも理解した。


 理解できたが――現状に当てはまらない気がする。


 彼らの目的がわからない。


 怪訝に思っていたフィーナとマサトだが、少し後でカイルの伴魂を通したザイルの話を聞いて、少しだけ事情を理解した。


「普段、表舞台にでない彼らですが。

 国の有事に姿を現すと文献にありました――」


 告げるザイルの動揺が、カイルの伴魂を経た上でも伝わってくる。


 カイルの国外渡航が、それほど大事だったのかと、ザイルは危惧しているのだ。


『いや、あいつらの目的がそれかどうか、わからんし……』


 マサトがつぶやいても、ザイルには届かない。


 マサトは精霊教会シルニーファ二人の登場による人々の高揚感を怪訝に思っていたが、伴魂から得た情報で、何となくの現状に思い至った。


 マサトはカイルの伴魂からだけでなく、近くに居る伴魂から、大まかな感情が伝わるのだという。


 伴魂の感情は、時に主の感情を反映する。


 多数の、畏怖しながらも憧れ、羨望を感じていた。


 人々の注目を集めて入館した精霊教会シルニーファの者二人に、裁判所の事務員が慌てて駆け寄り、話をしている。


 数分の会話後、事務員は裁判官席に行き、話し込んでいた。


 時間にして数分。


 事務員を下がらせた後、主裁判官が、木槌を叩いて咳払いをした。


精霊教会シルニーファの方々は、所用で参られたのこと。

 関係者あと二人に入廷許可を与え、彼らの傍聴も許可した」


「入っていいってよ~♪」


 ヘイ、カモン♪


 そんな効果音が聞こえそうな軽い口調で、精霊教会シルニーファの一人――身長の低い方の、年若に見える方が声を上げる。


 その彼女に――声から性別を判断した――、隣の、背の高い方が、ガスン、と拳を頭頂部に叩き下ろす。


 うぐ……。


 ……と、短いうめきが聞こえたような、聞こえないような。


 見た状況から感じたのだろうと、フィーナは思いつつ、あっけにとられていた。


 状況を把握しきれないまま――カツン、カツンと二つの足音が背後から聞こえた。


 ――すっ……と。


 足下が冷える感覚をおぼえて、体が反射的に強ばり、息が詰まった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ