表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
657/754

30.貴族裁判 23


 そうだとしたら。


 カディスはカイルが「継承権放棄」を言い出す機会を作ろうとしたのだと、より濃厚だ。


 ガブリエフ、ザイルは察しているようだった。


 だからこそ、カイルを止めているのだ。


『継承権放棄の撤回は?』


「放棄自体事、前例が少ないのです。

 無理でしょう」


『戦時中は血筋絶える可能性だってあるだろ?』


 食い下がるマサトに、ザイルもガブリエフ、カイルも首を横に振った。


「サヴィス王国は長年、戦のない国だ。

 戦火を想定していない」


『危機感、薄すぎだろ』


 ガブリエフの返答に、マサトはため息をつく。


 フォールズへの対抗手段はないのか。


 こぼすマサトに、ガブリエフが静かに告げた。


「先ほどの話で思ったのだが、エルド家の名誉毀損を訴えては?」


 ガブリエフの発言にマサトは眉をひそめた。


『訴えたって、鼻で笑われるだけだろ。

 一庶民に貴族並の名誉があるのかって』


 そう告げたマサトとは逆に、ザイルは「なるほど」とガブリエフの意図を察する。


 ザイルとガブリエフに挟まれたマサトは、二人を交互に見た。


 戸惑うマサトに、ザイルが答える。


「一庶民が関わる、多数の人命を無下にはできないでしょう」


 その言葉を聞いて、マサトもガブリエフとザイルの意図を察した。


『近隣市町村民の医療危機を訴える――?』


 しばらく押し黙って、フィーナと意識下の会話をしていたマサトだったが。


『~~~~~っだぁぁああーーーーっ!!

 もうっ!!

 ワケわかんねー!』


 ――と、小声ながら叫びを上げて匙を投げた。


『しがらみありすぎ!

 思惑絡みすぎ!

 ってかガブリエフのおっちゃん!

 策はあるって言ってたけど、結局何なんだよ!

 小一時間凌げばどうになるって言ってなかったか!?』


 フィーナが貴族裁判の被告者となるとわかった時。


 対処法を模索した。


 裁判自体、理不尽だから応じる必要が無いと息巻くカイルに「策を講じているから」とガブリエフが止めたはずだ。


「確信はないと付け加えたが――」


『確信あってもなくても!

 それが何かわかんねーと、こっちの対策しようがねーだろ!』


 マサトの言葉を受けて、ガブリエフは逡巡したが――結果は変わりなかった。


「推測では明かせない」


『――――――。

 了解。

 なら、こっちもそっちに合わせるわ』


 マサトは騒いでいた態度を一変させ、背筋を伸ばして居すまいを正す。


『フィーナは自主退学。それに免じてカイルの継承権存続――。

 って流れでいいか?』


「ダメだっ!」


 声を上げたのはカイルだけだった。


 同席する面々、他に方法がないと受け入れている。


 ――補足するなら。


 現時点では他に方法がないから、仕方なく受け入れていた。


 そうした状況もわからず声を上げるカイルを、マサトは冷たい視線を向けた。


『だったら。

 他に方法あんのか?

 継承権放棄以外で』


「――――――っ」


 言葉に詰まるカイルに、マサトはため息をついた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ