28.貴族裁判 21
カイルはガブリエフにムッとした。
「人に迷惑をかける者が王位継承者と言えるか?」
「話がすり替わっております。
公共の場において、王位継承権という繊細かつ吟味が必要なものを、国王陛下および正妃様に何の相談も無く、多数の前で公にする方を継承者と言えましょうか。
国王様、正妃様――ひいては御母上の第三王妃様に、まずは御相談されるべきでしょう。
結果もしかるべき時に、しかるべき場所で明らかとするもの。
場の雰囲気の飲まれた短絡は、慎み頂きたい」
「それではフィーナが――。フィーナには非がないのだぞ?」
「エルド嬢の考えもお伺いください」
カイルはマサトを見た。
マサトはガブリエフとカイルの話を、意識下でフィーナに伝えている。
即座にフィーナの返答がきた。
『「馬鹿なことしたら許さないから」――ってさ』
「馬鹿なこと?」
『説明しないとわんねーか?』
言われて、カイルは押し黙る。
被告席側からフィーナを見ると、眉をつり上げたフィーナに睨まれた。
『「簡単に諦めるな」ってさ』
渋面で思慮を巡らせるカイルに、ガブリエフはそっと進言した。
「発言される前に、ご相談ください。
策は講じております。
私の考えが合っていれば――対策は可能です」
そう言いながらも、ガブリエフは「策」がどういったものか、明言しない。
「不確か為、余計な混乱を招かぬよう、はっきりしてから話したいのです」
とガブリエフは告げる。
「その策がうまく行かない時は――」
「優先順位に沿った対応となりましょう」
非のないフィーナが処断されるだろうと、ガブリエフは言う。
「そうならぬよう、継承権を――」
継承権を放棄する。
「殿下」
言いかけたカイルをガブリエフが遮った。
「このたびの国外渡航。
同行なさる前、陛下からも責任の所在に関し、忠告されたでしょう。
責任の取り方は一つではございません。
自らが矢面に立つだけではございません。
殿下が無理を通したため、他者が罪に問われる。
自身のわがままで、親しい者が罪に問われるのがつらいとお思いなら、その思いをその身に刻みなさいませ。
自らの行いが周囲の人々にどのような影響を与えるか。
身をもってお知りなさい。
国王陛下は今回のような状況も想定した上で、殿下に問うたはずです。
――それでも同行するのか、と。
国王陛下の深き意図を組めなかったのなら、現状をそのまま受け止めるべきでしょう。
フォールズが訴えるはフィーナ・エルド。
フィーナ・エルドの罪となるのも、殿下の責任の取り方となります。
罪の所在については、エルドと直接交渉ください。
王位継承権と一学生の処遇。
何が優先されるべきか。
子供でもわかることでしょう」




