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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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27.貴族裁判 20


 フィーナの衣装も人々の興味を引き、結果、注目と評価を得ている。


 ――本人達の知らないうちに。


 ルディを推していたカディスは、今まで「相手にするまでもない」と高をくくっていたカイルの急成長に、危機感を覚えただろう。


 機会を探っていたところで、カイルとフィーナの国外渡航を知り、二人の行為が好ましいものでないと印象づけたいのだ。


(それだけでない)


 カディスはカイルが無理に同行したと勘づいている。


 無理を言ったカイルでなく、罪のないフィーナが責められるのを目の当たりにしては、カイルも心穏やかではいられない。


 自分の行いを悔やむだろう。


 王族の自分に甘言を用いたと責められるなら。


 違うと説明しても認めてもらえないなら。


 自分が王族でなければ、フィーナの罪は問われないはずだ――。


 カイルがそう考えるだろうと、ガブリエフもわかる。


 おそらく、カディスも想定している。


(そう来たか――)


 不可解だったカディスの思惑を、ガブリエフはようやく理解した。


 ガブリエフだけでなく、ザイルもフィーナも――おそらくマサトも、理解したはずだ。


 カイルの発言を遮った伴魂に「よくやった」とガブリエフは内心、感謝する。


 カイルの伴魂は疲れたのか、しきりに体を動かして、カイルの邪魔をした。


 その様子をガブリエフは怪訝に思いながら、ふとフィーナに目を向けた。


 ガブリエフと目が合ったフィーナは、必死の形相で首を横に振り、声なく口を開けて訴えていた。



    ――止めて



 カイルを、止めて。


 フィーナもカイルの考え、カディスの思惑に気付いている。


 気付いていないのはカイル当人のみ。


 確信したガブリエフは、おもむろに立ち上がると、裁判官に提言した。


「殿下の伴魂もお疲れの様子。

 一旦、休憩を入れてはどうだろうか」


 ガブリエフの提案に、裁判官は応じた。


 カディスは被告側が休憩中に対策をとるだろうとわかりながら、異を唱えなかった。


 対抗策がないとわかっているのだ。


 カイルの権限を守ろうとすればフィーナをかばいきれない。


 フィーナを守ろうとすれば、カイルの提案を受けるのが手っ取り早い。


 手っ取り早いが。


「吟味するいとまもなく、口にするのはいかがかと存じます」


 ガブリエフはカイルに「王位継承権の話を裁判で口にするな」と諫めた。


 休憩中、マサトは被告席側に行った。


 証人席にいるフィーナと被告席に座る者達は、裁判中、接触できない。


 人は無理だが伴魂の行動は自由だ。




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