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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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25.貴族裁判 18


 フォールズの経緯は知っている。


 興味は無かった。


 ただ、聞こえただけだった。


 友人が少し離れた場所に行ったとき。


 にこやかなフォールズはこう続けた。


「――僕に戻ってくれと頼むだろうから」


 つぶやきは友人には届かず。


 側を通りがかっただけのガブリエフに、聞こえただけのつぶやきだった。


 年を重ねて――身にしみる。


 カディス・フォールズの硬骨さを。


 宰相と財務大臣職――。


 ガブリエフを宰相とすることで、財務大臣職として発揮出来ただろう辣腕を封じた――。


(あり得ないとは、言えないだろう)


 実際、フォールズは大きな求心力を持っている。


 だから気になった。


 なぜフォールズが上級裁判――貴族裁判を起こしたのかと。


 相手は庶民のフィーナ。


 カイルが正規の手続きをとらず、国外渡航した旨を責めているが、罪状はカイルに甘言を用いて、国財を不当に支出させたとしている。


 裁判を起こす意味がわからない。


 本当にフィーナがカイルに甘言を用いたと思うのなら、フィーナの罪状を明らかにすれば良い。


 ――調べればわかる。フィーナに非はないと。


 フィーナの罪を問おうとして、成せなかったから上級裁判を起こしたとの経緯なら、ガブリエフも一応の納得は出来る。


 ――裁判を申し立てるほどとは、どうしても思えなかったが。


 しかしフォールズは、フィーナの罪を警務署に届ける前に、上級裁判を起こした。


 それがガブリエフは気になって、フィーナを擁護できる席に着いた。


 始まった裁判を見て、ガブリエフは「なるほどな」と得心した。


 警務署に訴えても、事実無根なのでフィーナに罪はない。


 しかし上級裁判で「カイルを惑わす危険分子」と判断されれば、貴院校退学、王都入都も禁じられる――。


 ダルメルの薄墨インク不正の経緯はガブリエフも把握している。


 不正が明らかになった経緯にフィーナが絡んでいると、極秘裏にしたはずだがカディスの耳にも入ったのだろう。


 この裁判で、フィーナを排除したいのか――?


 カディスが考えてもおかしくないが、どうもしっくりこない。


 フィーナはあくまで庶民。


 貴院校卒業後は、実家で両親の手伝いをしたいとも明言している。


 今、手を下さずとも、数年後には王都にいない人間に対し、周囲を巻き込んでまで手を下そうとするだろうか?


 裁判の行く先、やりとりを探っていたガブリエフは、あえて無言を貫いた。





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