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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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24.貴族裁判 17


 後にガブリエフが言う。


「それだけなら、職を奪わずともやりようはあった」


 ――と。


「手に負えないから、強引な策を講じるしかなかった」


 と、ため息交じりにつぶやいた。


 ガブリエフとしては、財務大臣職を続けたかった。


 比較的信頼できる息子を後任者として、最低限の部分を抑えている。


 財務署の職員教育から始め、部署の素地が固まり始めた所で、看過できない事例において、自らが宰相となる状況になっている。


 ――あと数年、財務大臣で居れたなら。


 もっとできたことがあったはずなのに。


 フィーナの「ダルメルの薄墨インク寄付事業」を聞いたとき、形容しがたい高揚感を覚えたと同時に、財務には関われない悔しさ、取り仕切る息子への妬みを感じていた。


 財務大臣を続けていれば、今回の寄付事業を、様々な部門に応用したいのに――。


 息子はガブリエフの意志を汲み、優秀だとわかっているが「自分だったらこうするのに」と思うことをすぐさま実行できない部分に、どうしても不満を持ってしまう。


 息子にはいやいや任された、多忙で神経をすり減らす部署を続けてくれるだけ、感謝こそすれ、不満を言える立場でないとわかっている。


 わかっているが――。


 そうしたことを考えている時、ふと――ガブリエフは思った。


 ――フォールズから、宰相職を取り上げたと思っていたが。


 本当に、自分が取り上げたのだろうか――?


 ――思い出すのは。


 セクルト貴院校時代。


 フォールズはアールストーン校外学習の運営委員だった。


 しかしとある運営委員と折り合いが悪く、緩慢なフォールズは責められ、委員を外された。


 その後、運営委員内でもいざこざがあって、結局、フォールズが戻り、フォールズと折り合いの悪かった者が外された。


 後に他の運営員から、外された委員の話を聞く。


「厳しすぎて息が詰まった」


 ――と。


 その後、フォールズ達は「可も無く不可も無い」アールストーン校外学習を取り仕切った。


 運営委員を辞退したガブリエフは、校外学習に何の感慨もなかった。


 自炊も家訓として一通り鍛えられていたので(遭難、災害時を想定して)、戸惑いも驚きもなかった。


 ――ただ。


 今でも思い出せる、耳に残るフォールズの言葉がある。


「僕が目障りだったんだから、仕方ない。

 ――まあ。

 そのうちわかるだろうよ――」


 フォールズと友人の会話が、通りすがりのガブリエフに聞こえた。







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