23.貴族裁判 16
伴魂をとりなすカイルに、フィーナとマサトはホッとしつつ、打開策を考えた。
カイルの伴魂が邪魔をしなければ、カイルは感情にまかせて――先のことを考えずに発言したはずだ。
王位継承権を辞退する
「王族」の範囲には、いくつかの定義がある。
一つ、君主である国王。
二つ、国王の妃。
三つ――王位継承権第五位までの者。
第一王位継承権者は、正妃の第一子である。
正妃の子が優先的に継承権者となり、続いて第二王妃の子、第三王妃の子となる。
現国王には三人の子がいる。
第一王位継承者は、正妃の子、国王の第二子、オリビア。
続いて第二王位継承者は、第二王妃の子、国王の第一子、ルディ。
第三王位継承者は、第三王妃の子、国王の第三子、カイル。
続く第四王位継承者は、国王の弟、正妃の子であり、前国王の第二子である。
第五王位継承者は、第二王妃の第一子で、前国王の第三子だ。
サヴィス王国は、独特な後継者選定をする。
それは国王と正妃、二人のあり方、互いの関係性に由来した。
生まれ順にかかわらず、性別にかかわらず、正妃の第一子が第一位王位継承者となる。
実際、王位を継ぐかはその後の経過次第だが、長年続いていた慣例だった。
まずをもって、サヴィス王国では正妃、および王婿選定が大変だった。
出自、性格、素養、能力、学力、その他もろもろ――。
秀でた上「神託」の儀式が必要だ。
そうして選ばれた伴侶を、サヴィス王国では王同様、神聖視する。
王は、脈々と受け継がれた、尊き血筋の方として。
正妃、王婿は王族にふさわしい素養と能力を備えた上、神託を受けた――国神に認められた者だ。
王位継承権を失う場合としては、本人からの辞退、ふさわしくないと剥奪される等、前例はある。
(それは今じゃないっ!)
何考えているのと、フィーナは歯がみしてカイルを睨んだ。
カイルが王位継承権を辞退したいなら、それはそれでかまわない。
しかしそれは熟考した結果なら、との前提においてだ。
被告席側に座るカイルは、フィーナの視線に気付いていない。
(――『まさかの策士だな』)
怠惰なフォールズ。
堅実なスチュード。
前任者と後任者。
比べて噂される二つ名だ。
フィーナもマサトも、サリアからガブリエフが宰相になった経緯を聞いてから、その二つ名を真に受けていた。




