21.貴族裁判 14
カイルの伴魂を通して、打開策が聞ければと思ったが――。
「打つ手なし」との反応が返ってきた。
ガブリエフが考えあぐねるほど、カディス・フォールズの案は効果的だった。
カイルへの非難を回避し、フィーナへの誤解を解くには――。
(――『無理だ』)
カイルとフィーナ、二人への非難を回避する案を思いつかない。
「私の国外渡航が問題なのだな」
カイルが、カディスに訊ねる。
「殿下は惑わされたのでございましょう?
殿下ご自身が気付かぬよう、巧妙に――」
「違うと――私の意志だったと――何度言っても伝わらぬのだな。
今一度問う。
問題視されるは私の国外渡航か。
私が利用されたとして――今回はなかったにしても、今後の懸念があると言うのだな?」
「忠臣の一人としての、進言にございます」
「忠臣、か――」
カディスの言葉を、カイルは鼻で笑った。
カディスとカイル、二人の関係を知る者達は、その意味を読み取れる。
カディスはルディを推している。
この場で言う「忠」は王族に対してのもの。
王族の一人として、恥ずかしい行いはするなとの忠告だ。
カイルを思ってのことではない。
逆にカイルを諫めている。
カイルもカディスに良い印象はない。
口出しされるいわれはないと、腹立たしくて仕方ない。
アブルードにはカイルが無理矢理同行した。
渋々受け入れてくれたフィーナ達に迷惑をかけている現状に、イラだちをつのらせていた。
王族だから、忠告されるのか。
――第三王位継承者を牽制しようと、陰惨な企てを講じるのか。
今まではカイルの身内だけに向けられていた、継承者関連のやっかみ。
それが今回、フィーナを巻き込んでいる。
表だってはフィーナを疎んじているように見えるが、長年、第三王位継承者として――姉と兄と比べられてきたカイルは、カディスの思惑を感じ取っていた。
少し前まで、しがみついていた王位継承者としての地位――王子としての立場。
今は不思議と惜しいとは思わない。
自分に自信がなくて、王子の立場に固執していた。
セクルト貴院校に入学して――様々な経験をして――フィーナと出会って。
反発しながら、知らず知らずのうちに、競い合う中で己を高め、結果も伴い、自信を得た。
――それでも。
フィーナは常に先を行く。
飽くなき好奇心、常識はずれの思考が、抜きん出た結果を導く。
そうした場を目にするたび、形容しがたい高揚感を味わった。




