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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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15.貴族裁判 8


 通常、相手方の帳簿までは確認しない。


 今回は突出した数字に違和感を覚えたから発覚した。


 その数字にも、フィーナは違和感を覚えた。


(どうしてこんな、あからさまな数字……)


 数百でやりとりしている中、一つケタが違う取引は目を引く。


 日々の取引のなかに少量、偽りをまぜ続けたなら、フィーナも気付かなかったろう。


 あとになって思う。


 カディス・フォールズは、アーティー男爵で試したのだろうと。


 検閲者が、どれほど気付くのか。


 気付かれなければ自分でも行い、気付かれたらアーティー男爵の所業とする――。


 不正をしたアーティー男爵の件は、フィーナも聞いていた。


 アーティー男爵の持領も困窮にあえいでいて、領民を思ってのことだと知る。


 私腹を肥やす貴族籍は、不正で自らの懐を潤すが、アーティー男爵は一旦、自分の懐に入れながらも領民に還元した。


 そうした事情を知ると、頭ごなしに非難できない。


 アーティー男爵自身、自責の念に駆られながらも領民の為に奔走していた。


 ――アーティー男爵がカディス・フォールズ侯爵に借りがあるのは、そうした事情もあった。


 アーティー男爵の弱みをつくカディス・フォールズの所業。


 カディス・フォールズの姑息さに、フィーナは歯がみした。


 今でも十分な暮らしと地位があるのに、なぜ不正を働いてまで私腹を肥やそうとするのか。


 アーティー男爵不正の一件から、より厳重な不正防止対策が取られた。


 早急に対応を迫られ、苦し紛れに採用された案だったが、後に様々な機関で採用され、書類偽造の激減につながった。


 詳しい仕組みは省くが、そのシステムの波及が、カディス・フォールズには手痛い事態になったのだ。


 身から出た錆なのだが――カディス・フォールズの感性が、フィーナを「要注意人物」とした。


 カディス・フォールズの、自己保身の行動は早かった。


 フィーナの周囲を調査し、攻め所を探る。


 カディスがフィーナの身辺調査をした時期も悪かった。


 本人不在、カイルも母方の故郷に長期休養――。


 二人の学生としての恋仲は、スーリング祭――ダルメルの薄墨インクを話題に上げた際、周知の事実となっている。


 王子と庶民。


 身分差があっても、二人はセクルト貴院校生。


 学生時分は、身分差関係なく、自由な恋愛を当人同士、周辺、関係者も「暗黙の了解」として認めていた。


 口を出す方が「粋でない」と非難されるほどに。





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