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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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14.貴族裁判 7



         ◇◇       ◇◇



 その時の感情を、どう表現すればいいのか。


 マサトの話を聞いた時、フィーナは一瞬息を止め――全身が総毛立つ怒りを覚えた。


 ダルメルの薄インク寄付事業。


 気候の影響で生活に苦しむ人々の助けになるよう考えたものが、関係ない人たちの懐を肥やす材料になるのが、フィーナには我慢できなかった。


 ダルメルの薄インク寄付事業は、フィーナが提案したものだ。


 元から関与するつもりでいたし、帳簿類はフィーナが望めば全て目を通せる約束を、関係各署に通達していた。


 ――寄付事業は貴族籍の懐を肥やす――


 そう聞いたとき、フィーナは「なぜ」と不思議でならなかった。 


 国の財政を担う国の役人が、なぜ見抜けないのかと。


 だから帳簿を見たかった。


 自分が発案して始まったものの、ゆく末を確認したかった。


 最初の先制が効いたのか、おかしな帳簿は目に付かなかったのだが。


(一月に、一男爵から1000の受注――?)


 多量産が難しい時期の受注数に目がとまった。


 注文は多方面から受けている。


 それでも一注文100か200前後だった。


 結局、1000の注文は受けきれず、100の注文に変更を願い出た。


 変更は了承され、品も100送った。


 それは後に聞いた話で明らかになったことだ。


 フィーナが見た帳簿には。


 受注、発注、受取、代金精算。


 全て完了している帳簿に「受注発注精算1000」とあった。


 在庫管理も把握していたフィーナには奇異に見えた数だった。


 確認して、そこで不正が明らかとなる。


 帳簿には寄付を受けるダルメル領側と、寄付をする貴族側の帳簿が存在する。


 帳簿にも二種類有り、領を管理する公的な帳簿、貴族の資産を管理する私的な帳簿があった。


 これまで寄付と言えば、貴族の私的財産から行うのがほとんどだった。


 しかしダルメルの薄インクは、寄付をする貴族領の公的資金で一定数購入し、購入したそのままの金額で各領の市場に出すことで、迅速化を図った。


 販売経路の中途経費をとっていないので、売れ残れば購入した貴族領の損失となる。


 そうした部分を考慮して、国は公的資金で購入した分に対して、一定の割合で税を控除するとした。


 領の公的資金。


 それは領民の税が財源なので、運用に注意を払った対策をとったのだった。


 ――税控除の案は、マサト発案だった。


 アーティー男爵側の帳簿には、フィーナが違和感を覚えた件も含めて、書類偽造も数点あった。


 それはアーティー男爵の帳簿を見るだけでは気付かず、ダルメル側の帳簿と付き合わせて判明したものだった。






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