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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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13.貴族裁判 6


 カイルにマイナスのイメージを与えたくない。


 マサトは周囲を見渡した後、フィーナに告げた。


(――『サリアのとーちゃんが言うには、半々だと』)


 カイルは伴魂も伴っている。


 マサトはカイルの伴魂を通して、被告席側とやりとりしていた。


 マサトがフィーナの側にいるのはそのためだ。


 残念ながら、被告席側の情報、意志をフィーナ達が把握しても、フィーナ達の意志、情報は被告席側には届かない。


 半々とは「王族としてあり得ない、誇りはないのか」との非難と、「非公式の渡航がどういったものか、理解した上で、自身の身分におごらず、自らの提言に準じた評価されるべき意志の固さ」との賞賛で二分されていた。


 賞賛側は「庶民の生活で得た経験は、殿下に好影響を与えている」とカイルを快く見ている。


 自分が非難されるとわかりきったこの場に、被告側――フィーナ側に同席しているのが好ましく映っていた。


 裁判官を交えた、被告側ザイルの弁論、原告側カディスの弁論。


 フィーナは注意深く聞いていたが――どうしてもわからなくて、マサトに聞いた。


(――「結局。裁判までして、フォールズ侯爵は何をしたいの?」)


(――『何って――フィーナを追い出したいんだろ』)


(――「追い出すって、セクルトからだよね。

    私がセクルト退学させられて、侯爵に良いことある?」)


 市井出身者の一学生と侯爵。


 フィーナを退学させたいなら、裁判など公の場でなくとも、やりようはありそうだが。


 クレア・キャンベルをブリジットの担任にあてがったように、セクルト貴院校内で手だてはあるだろうと、フィーナは思う。


 裁判となるとフィーナだけでなく、カイルも関わってくる。


 カディス・フォールズはルディを推す一派だ。


 次期王位継承者争いからすると、カディスにとってカイルは邪魔だろうが、現段階でカイルから――王族から、不興を買うリスクを冒す理由がわからない。


(――『それは――』)


 答えようとしたマサトも『言われればそうだ』と戸惑った。


 マサトの感情はフィーナにも伝わる。


 そうした最中、マサトが意識下の会話をふと止めた。


 うかがうように、虚空を見つめて意識を集中する。


(――『……マジかよ』)


 ため息まじりにこぼしたマサトは、こう続けた。


(――『サリアの父ちゃんからの情報。

    ダルメルのインク寄付。

    不正で摘発された貴族がいるんだが。

    その貴族にフォールズ侯爵が関与している。

    ……で。

    その貴族――アーティー男爵は、フォールズ侯爵に借りがあって、逆らえず、いいなりになったらしい。

    帳簿も巧妙だった。

    帳簿に詳しい役所の人間が何人も見てたし、ダルメルのインクに関しては、サリアのにーちゃんも、帳簿類は全部目を通してた。

    官職はだれも気付かなかった。

    違和感に気付いたのは――フィーナだけだった』)




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