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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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36.学年寮長【バーンスタイン家】


 面識あるらしいラナはおろおろとして、テレジア達寮側統率組は、ローラの性分を知っていたのだろう。


 特に驚くこともなく、逆に「その通り」と言いたげに、頷いている。


「な……っ! 何なんですの、あなたはっ!」


 いち早く我に返ったブリジットが、怒りに顔を赤く染めながらローラに食ってかかる。


 ブリジットに言われて、「ああ」と、ローラは自分が名乗っていないことに気付いた。


「うちはローラ・バーンスタイン言うねんけど……知らんやろうな」


 皮肉げな笑みを浮かべるローラに、ブリジットは勝ち誇った笑みを浮かべた。


 ローラの名を聞いたサリアは「――バーンスタイン?」と小声で呟いて驚きを見せている。サリアのそうした表情に、ブリジットは気付いていない。


「知るわけないでしょう? 数ある貴族籍の、一つでしかない名など」


 ブリジットの姓であり称号でもある「フォールズ」は、貴族籍の中でも順位二十の中に該当する家系だった。


 上位、十の中に該当する家系は、現国王の血族関連になるため、二十内の順位に該当する家系というのは、古参の、古くから脈々と受け継ぐ高貴な血脈とされている。


 ブリジットの家系もサリアの家系も二十内の順位に該当する家系であり、順位関係で言うとサリアの家系よりブリジットの家系の方が、やや上位になる図式になっていた。


 貴族籍の順位にこだわるブリジットが「バーンスタイン」の名を聞いて、何の反応も見せないところを見ると、覚えるのにも値しない家系だったのだろう。


 ローラとしてはブリジットの反応は想定内だったようで、ブリジットの答えに暗い笑みを浮かべた。


「そうやろうなぁ。こっちとしてはそれでも別にかまへんのや。

 けどな? されたこっちは覚えとるで。

 後で『知らぬ存ぜぬ』言われても困るから、約束してくれへんか。

 バーンスタインとラナ、双方が関わる何かしらに、ブリジット、あんさんが居る限り、フォールズが頼み事しても、断れる権利を持てると。

 まあ、高貴な貴族さんが小さな貴族籍の家系に頼むやなんて、露ほどにもないやろうけどな」


「いいですわよ!」


 ローラに煽られる形で、ブリジットは鼻息荒く提案を受け入れた。


 ブリジットとしては「ローラとラナに関わりを持たずにすむ」との考えだったのだろうが、事はそれほど単純ではなかった。


 口頭のやりとりながら、フィーナも「……あれ?」と違和感を持つほど、顕著な言い回しだったのだが、頭に血が上っているブリジットは気付いていない。


 サリアはフィーナよりも明確に違和感を覚えて、なぜかも理解して、慌ててブリジットに「ちょっと待って」と止めたのだが、ブリジットはうるさげな表情を浮かべて聞き入れず、結果、ローラが促した確約書に、バーンスタインとラナが関わる事柄に関わりを持たないと謳った文言が自身の意志とのサインをした。


 サリアはサインする前にブリジットを諌めようとしたが、ブリジットは聞き入れず、それでも止めようとしたサリアを、寮側陣の教師や寮母が「これだけ言っても聞き入れないのですから」とやんわりと止めていた。


 サリアにはそれが信じられないと言った眼差しを教師や寮母に向けたが、彼女らは彼女らで思うところがあってのことだった。


「サリア、あなたは一度諌めたのです。

 それを感情に任せて聞きいれようとしないのですから、後はブリジット自身が責任を負う事柄です。

『なぜ諌められたのか』考える余地もあったのです。

 ――一度、自身の身に、降りかからないとわからない事柄なのでしょう」


「しかし――これはあまりに酷なことになるのでは……」


「サリア。あなたが想定できることが、なぜブリジットは考えが及ばないのでしょう?

 ……今回に限ったことではないのです。

 寮の部屋を変えてから、幾度も問題はありました。その度に改める機会はありました。

 けれど、ブリジットは諸問題に真摯に向き合うことなく、自分の価値観と考えだけで対処してきました。

 私どもも、助言や忠告を成していたのです。それでも、改まることはありませんでした。

 結果、今回のラナの伴魂騒動です。

 今回は……私どもも看過できませんし、寮の生活を統率する同じ立場として、ブリジットを庇うつもりもありません。むしろ弾劾したいくらいですよ」

 

 女性教師の話に、サリアは驚きに目を見開いて、言葉を失っていた。


 ブリジットの素行は、前々から気になっていたのだが、そこまでこじれているとは思っていなかったのだ。


 ローラが提示した確約書にサインしたブリジットは、誇らしげな笑みを浮かべている。


 確約書を手に入れたローラは、晴れやかな笑みを浮かべているが……後々の事を考えると、末恐ろしさをサリアは感じていた。


 それから話は、中座していた寮の部屋の話に戻った。


 ブリジットは最後まで単独室に抵抗していたのだが「決定事項」と付きつけて、話を強制的に終了させた。


 数日中に部屋の移動を行う話でまとまった後、散会の合図を受けたフィーナは、そそそ、とラナの側へ足を向けた。


 ブリジットは足早に部屋を後にしている。

 教師陣や寮母、ブリジットにカトリーナも、順を追って部屋を後にした。


 そうして最後に、ラナとローラ、フィーナとサリアが来客室に残ったのだった。


 フィーナに気付いたラナが、簡単な挨拶を送る。フィーナも簡単な挨拶を送り返して、並び立つローラにも簡単な挨拶を送った。


「フィーナ・エルドと申します」


「うちはローラ・バーンスタインや」


 ローラもフィーナに簡略のあいつを送った。


「伴魂の調子は?」


 ラナに尋ねると、穏やかな笑みを浮かべて、肩かけの小物入れからそっと伴魂を取り出した。


 リスの伴魂は、まだ体に包帯を巻いているものの、ラナの手の平でちょこまかと動いている。


 元気そうな様子に、フィーナは安堵の息をついた。




ローラの口調に関しては、つっこみはご勘弁願います……。

「えせ」の認識はあるので……。

雰囲気として口にしているローラの口調です。

話の流れから出来た人物ですが、めちゃくちゃ話してますね。

話は変わりますが。

今日はリアルのお仕事、疲れました……。


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