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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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12.貴族裁判 5


 帰国後、極秘裏としても、何かの拍子に事情を知った者に避難されても、カイルは「自らが望んだこと」と、はねのけるつもりだった。


 王族への非礼は裁判を経ることなく、罪か否か、刑法に準じる。


 当事者もしくは親類縁者が訴えた場合だ。


 本人、親類縁者も訴えない場合――第三者が訴えを起こし、裁判が開かれる。


 王族や、上位貴族籍が関与する事案が該当する。


 王族や上位貴族は、周囲に与える影響が大きいため、冷静な第三者の意向を検討させるべきとされたものだった。


 過去の過ちを反省してのものだったが――適用事例はほとんどない。


 関係者は貴族籍がほとんどなので「名誉の毀損」で逆に訴えられるのを恐れていた。


 よほど勝利を確信していなければ難しい。


 何より、当事者間で話がついているものを、第三者が口出しするのはよほどのことだ。


 カイル自身、身勝手な行動は承知の上だ。


 それが誰かも不利益を生じさせてはいない。


 なのに無関係のカディス・フォールズがしゃしゃり出てくるとは、思ってもみなかった。


 それも無理を通したカイルを糾弾するのでなく「カイルをそそのかした」と事実無根の罪でフィーナを糾弾するとは。


 カディスの糾弾後、被告側からザイルが証言した。


 公にはされていないものの、カイルは渡国の許可を取っている。


 クレンドーム国との交流から、他国の見聞を広げたく思っていた。


 フィーナとラナが国外へ行くと聞き、同行を願い出た。


 学生の身分のため、公式として大事にはしたくなかったので、極秘裏とした。


「護衛に関してですが、私を含め専属護衛騎士二人、先だって行われた騎士団の競技会優勝者、シンも同行しておりました。

 少数精鋭としては十分だと思いますが」


 ザイルの話に、場がざわついた。


 話だけ聞けば、十分すぎる護衛だ。


 カディスが訴える「護衛の不備」は退けられる。


 ――専属護衛騎士二人は勝手に付いてきたこと、シンとの合流は後日だった点は説明を省いているが、ウソはついていない。


 フィーナとしては別なことが気になった。


(――「優勝してたの?」)


(――『若気の至りだ。

    ……挑発されたのカチンときて、やっちまったんだよなぁ』)


 渋面でマサトはこぼす。


 その時の情景だろう。


 競技会の記憶が意識下で伝わってきて、フィーナも納得した。


 教典通りの剣術になれている騎士は、シンの武術を交えた剣術に翻弄されていた。


 被告側はザイルが主に話をするようだった。


 カディスの主張する「カイルの威光で優遇された」場はなく、非公式の旅故、平民の、一般的な宿や食事で過ごしたと告げる。


 傍聴席がざわついた。


(――「これってどっちの反応?

    王族としてあり得ないって非難?

    よく対応したって賛辞?」)


 傍聴席の反応は、この場に居合わせる貴族籍の心情だ。




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