5.帰還 5
(芽は早い段階で排除する)
父、ガブリエフと兄のやりとりから、不穏な動きを見つけたら、即、対処した方がいいと学んだ。
今がその時だとわかっているのだが、材料がない。
それ以前に。
(どうして知ったの。どこまで知ってるの)
カイルの休校は「曾祖父の療養見舞い」とセクルトに届けている。
実際、母方の曾祖父は長年、病を患い、首都へ赴けずにいた。
曾祖父は、カイルに会いたがっているが、第二王子の立場から、長期間、首都から離れられずにいた。
今回、カイルの休校が認められたのは、高齢の曾祖父との時間を持たせようとのものであった――。
――と、それが表向きの理由となっているが、それでも通常、一月の休校は認められない。
セクルトがカイルの休校を受け入れたのは。
(洗礼の為と思ったから――)
洗礼。
貴族の子息子女は「洗礼の儀」を経て、成人と認められる。
洗礼の儀は、伴魂と共に行う儀式だ。
洗礼の儀の出来が、魔法能力に影響する。
洗礼の儀の出来は、伴魂の力も大きく関与する。
上位貴族は洗礼前になると伴魂を捕縛した地で過ごし、伴魂との繋がりを深めるという。
カイルの曾祖父見舞いは、貴院校側では洗礼の準備だと思われていた。
その為、反論もなかった。
上位貴族や王族は、洗礼の良し悪しで人生が決まる。
洗礼に向けて、伴魂を得た曾祖父の地で、繋がりを深めるのだろう――と、貴院校の教師陣は思っていた。
洗礼は、セクルトの卒業半年前から約2年の間に行われる。
精霊を崇める精教会から、数日前に洗礼の儀の打診を受けるので、洗礼がいつになるか、誰も知らなかった。
精教会も「精霊の神託」を受けて、該当者に連絡する。
貴族が裏で画策しようがないものだった。
それは王族も同じだ。
そうした状況なので、カイルだけでなく、上位貴族は、洗礼に向けて貴院校を長期間休んでいた。
大抵は一週間から二週間だ。
カイルの母方の故郷は遠方にある。
経路の日数も考えて、一月の休暇となった。
もちろん、休校を理由に成績を下げない約束の元にだ。
著しく成績を下げた場合は、留年となる。
フィーナの事情を、貴院校上位教師陣は知っている。
フィーナの休校理由は「諸事情」で押し通した。
理由を知りたがる者もいたが、校長が詳細には箝口令を敷いたため、アルフィード拉致を含め明らかになっていないはずだ。




