表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
631/754

4.帰還 4


 カディスが敵意を向けるとしたら、それはガブリエフにだ。


 サリアは関係ない。


 娘のサリアを快く思えない心情はわかるが、それを所かまわず表に出すなど、人としてのあり方も疑われる。


 サリアもカディスの性格を理解しているのだろう。


 カディスの発言に動じる様子はなかったが、状況を理解できず、戸惑っていた。


 カディスは「ふん」とサリアを鼻白むと、「そこをどけ」と顎で指す。


「我々は犯罪者を拘束しに来た。

 かばい立てすれば、貴様も拘束する」


「犯罪者?」


 眉をひそめるサリアに、カディスは愉悦の笑みを浮かべた。


 事情を知らないのかと、優越感に満ちた笑みを。


「そこのフィーナ・エルドだ。

 カイル殿下に甘言を用い、国外に連れ出した罪――。

 身に覚えがあろう?」




        ◇◇      ◇◇




「カイル……殿下に?」


 フィーナもサリアも戸惑った。


 カディスの真意がわからない。


 わからないものの、二人ともカディスの発言に息をのんだ。



   ――国外へ連れ出した――



 極秘裏のはずなのに、カディスに知られている。


 その点に驚いた。


 カイルは自ら望んでフィーナ達に同行した。


「甘言を用いて」などいないのだが――。


(なんてこと――)


 カディスの思惑に勘づいたサリアは歯がみする。


 父のガブリエフの側にいると、聞き耳を立てなくても様々な情報が聞こえてくる。


 そうした情報を日々、耳にしていると「駆け引き」もわかるようになった。


 わかるだけだ。


 仕掛ける腕はない。


 カディスの先制は、カイルの言い分を防いでいる。


 第二王子カイル、彼の同窓生、庶民のフィーナ。


 フィーナがカイルをそそのかし、本来、必要な手段を経ずに国外へ連れ出した――。


 そうカディスは言っている。


 カイルの他国渡国を、本人が「自分が望んだことだ」と周囲に宣言するのと。


 第三者が「惑わされ、正確な判断ができなかった」と吹聴するのでは。


 最初に聞いた印象が強く残る。


 カディスの発言で、カイルが出国したのは「フィーナにそそのかされたから」と印象付いた。


 ここはセクルト貴院校だ。


 国内の主要な貴族の婦女子が生活する場である。


 誰が何を聞いているか、聞こえているか――。


 カディスはそれも考慮した上で、兵の乱入という非難を浴びる所業を用いたのだろう。


 寮内の混乱は、寮内の婦女子の関心を集め、好奇心、保身、状況把握――。


 様々な観点から、フィーナ達の動向を注視した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ