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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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35.学年寮長【ローラとラナ】


 アルフィードの件を出されて、簡単に「了承」したサリアに「それでいいの?」と、対面席には届かない声で尋ねる。



 サリアは「いいの」と断言した。


「フィーナのフォローをしたところで、そのことをアルフィード様が知る機会なんて、露ほどもなかったのよ?

 それが『フィーナを手助けしている』って、テレジア様やカトリーナ様がアルフィード様に言ってくれるのよ?

 アルフィード様と私の接点がぐんと増えるってことじゃない」


 嬉々として告げるサリアに「そういうもの?」と首をかしげてしまう。


 サリアが望むなら、姉との対話時間を設けることくらい、たやすいのに。


 フィーナはそう思っていたものの、サリアとしては第三者が「フィーナを手助けしている」ことを話す場があるというのも重要視していた。


 フィーナのフォローに関しては、状況的にそうなってしまっているだけで、恩を着せるつもりはないのだが、サリアとしては憧れの人、アルフィードから「妹を手助けしてくれて、ありがとう」と礼を言われる……そうした場面を想像するだけで、卒倒しそうなほどの喜びを感じるのだ。


 そうした状況になるためには、テレジア達の発言が必要となってくるのである。


 そのように、サリアはサリアでフィーナのフォローをする状況を受けれていた。


 一方、ブリジットは、テレジアの言葉を聞いて不満そうな表情をのぞかせていたものの、学年寮長はフィーナになるだろうと、十日ほど前のラナの件から感じていたのだろう。


 不満をのぞかせながらも「仕方ない」と受け入れていた。


「仕方ありませんわね。決まったことですから。部屋はこの方たちの部屋と交代ってことですわね」


 側仕えの者と同室が可能だとわかって安堵したのだろう。


 フィーナとサリアの部屋は、互いの寝室と共同リビングが設えてある部屋だ。常時、側仕えが部屋に待機できる状態であることに、ブリジットは安堵していた。


 しかし、テレジアはブリジットの言葉に目を伏せて、緩く頭を横に振った。


「――いいえ。ブリジットには単独室に行ってもらいます」


「「「――単独室?」」」


 サリアとフィーナ、そしてブリジット、三人の声が重なった。テレジアはラナを含めた一学年生に単独室について説明した。


「セクルト貴院校は、男女共学の学び舎です。

 男女区別なく、成績に応じて選抜しているので、男性学生も女性学生も、寮の部屋的にちょうどいい数にならないこともあります。

 他には、中途退学する方もいらっしゃいますし。そうすると、二人で一つの部屋をという状態がとれない場合もあります。実際、個室と同じ状況になっては、平等性に欠けてしまいます。

 そうした状況を防ぐために、相方がいない、もしくは相方がいなくなった生徒は、共同部屋の半分の大きさの単独室に移ってもらいます」


 そのような部屋が存在すると、サリアもフィーナもラナも、ブリジットも知らなかった。


 慌てたのはブリジットだ。


「そんなっ! では側仕えの者はどうしろというのです!?」


 これまでの個室には、側仕えの者が寝泊りする場所もあった。


 しかし単独室の話を聞く限り、側仕えの者が終始控える場所はないように聞こえる。


 実際、単独室は一人で過ごす前提で作られているので、二人が寝泊りなど生活を共にするには無理があった。


 声を荒げるブリジットに、テレジアは冷静に「側仕え専用の宿舎で寝泊りをすればいいだけでしょう」と切り捨てた。


「セクルトでは側仕えの同伴も認めていますが、制限あってのことです。

 他の生徒は規律に倣っているのです。ブリジット、あなたも倣うべきでしょう」


「けど……っ!」


 動揺するブリジットは、単独室への移動を了承しない。


 ブリジットとテレジアの収拾のつかないやり取りをしばらく見ていた色濃い朱色の短髪の女性が、あからさまな大きなため息をついて、会話を止めた。


「ちょっとええか?」


 耳慣れない話言葉に、フィーナはぴっと、背筋が正される思いだった。


 ブリジットもテレジアも、虚を突かれて言葉を止めて、ラナに「ローラ」と呼ばれた女性に目を向ける。


 元々つり上がり気味の目をひそめると、更につり上がっているように見える。


 不機嫌を前面に出した表情で、彼女はブリジットを睨みつけた。


「なんなん、あんた」


「あ……あんた?」


 言われたブリジットは、目を白黒させていた。


 初めて聞く単語だが、言いたいことの主旨はわかる。


 同国籍の人間なら、聞き取り困難な方言が混じっていても、伝えたい意図は感覚的に理解できた。


 しかしそれも、庶民の間での話だ。貴族籍間では、常用語を用いるようになっている。


 意図は汲みとれても馴染みのない言葉、同時に常用語を用いないことに、ブリジットは面食らっていた。


 ブリジットの戸惑いを知っているだろうに、ローラという名の女性は、口調を変えることなくブリジットにたたみかけた。


「何さまのつもりやと言うとんねん。首席でも次席でもないっちゅうのに、学年寮長?

 そこの姉さんが『個室いやや』言うて、個室がよかったあんさんが変わっただけやろ?

 何の実力もあらへんやん。

 なのに個室の特権絡みで『学年寮長やれ』言われて、けど権力だけかざして、ろくすっぽ仕事こなせなかった言うに、反省せえへんわ、ラナに謝罪せんわ。

 そこの姉さんはラナの伴魂気遣ってくれたっちゅうに、それもあらへん。

 ラナはな? うちが無理言って、セクルトに入ってもらったんやで?

 ラナは『恐れ多くて無理』やと言い続けたんに、先々のこと考えるとラナにセクルト卒業したって肩書が、どうしても必要になるんねん。

 肩書が必要なんはうちの都合や。

 ラナはなくてもかまへんのや。

 そんな事情もあって、頼んで頼んで、ようやっと了承してくれたんや。

 そんな事情も、こちとらあるんや。

 なのに、なんやの、お前。

 ラナの話し聞くことなく、相手方の話しか聞かんと判断して。

 あげくに『同室いや。単独室いや』やと?

 いやで結構。

 セクルトやめれば実家でぬくぬく出来るやん。

 そんなに嫌ならさっさとセクルトやめ。

 その方がこっちもせいせいするわ」


 ローラと呼ばれた女性の言葉に、ブリジットとフィーナ、サリアは呆気にとられて言葉を失っていた。




話の流れのまま、書くまま書いていましたが、ふと気付きました。

「転生者=伴魂」、全然活躍してない……っ!(滝汗)

ホントは、スーリング祭で活躍の機会があったのですが、なんか違うな。って思って先延ばししたんですよね……。

 スーリング祭に変わる活躍の場は考えてます。

 もう少し先の話になります。

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