2.帰還 2
激しい揺れが想定されるので、捕まる場所の確保と、体をクッション的な物で包み、柔らかな物に座り、振動で口の中を切らないように、口に詰め物を入れた。
ゲオルクとカシュートは「慣れている」と対策は不要という。
言われるまま、保護対策をしたフィーナ、アルフィード、カイルは、それでも相当の我慢を強いられた。
振動が激しく、話などできない。
馬車酔いで気分も悪くなった。
吐き気までいかなかったのが幸いだ。
アレックス達が心配したのは、カイル達、荷馬車にのる面々の体調だった。
アレックス、レオロード、リーサスは長時間騎乗の訓練を受けているので対処できる。
その彼らも「騎乗より荷台のほうが辛い」と認識している。
騎乗は馬の上に一人なので、ある程度、自分で操作可能だ。
荷台は想定できない、大小の振動が不意を打って来るので、対応が困難なのだ。
フィーナ達は揺れに任せて、目を閉じ口を閉じ、苦難の時間を耐えた。
フィーナは帰路の道すがら、アルフィードからこれまでの話を詳しく聞こうと思っていたが、話もままならない。
途中、馬を替え、往路にかかった時間より大幅短縮した時間で、王都に到着した。
最短距離をとったので、途中、ローラ達商談を追い越したと後で知る。
振動が激しかったのも、整った遠回りの道より、悪路だが最短の道を選んだからだった。
帰還したフィーナ達は、それぞれの寮、アルフィードはベルーニア家の別宅にこっそり戻り、一日中寝込んで体調を整えた。
カイルは王都帰還後、すぐ父である国王に謁見を申し込んだ。
家族でも、多忙な時期ならすぐには会えない。
内々の謁見でも、都合がついたのは二日後だった。
カイル達には幸いだった。
体を休めることができたのだから。
カイル、フィーナ、アルフィードが、ザイルと共に国王、王妃、オリビアと顔を合わせる。
そうして内々に話を進めていた矢先だった。
帰還した翌日――謁見の前日。
疲労困憊のフィーナは、寮の部屋で泥のように眠っていた。
フィーナ達の無事の帰還を喜んだサリアだったが、戻るなり、ベッドに突っ伏して眠るフィーナの疲労を気遣った。
積もる話もあるが――それは後でいい。
今はゆっくり休ませよう。
そうしていた時だった。
フィーナが初めに異変に気付いたのは、寮のざわめきだった。
悲鳴や小さな叫び声――無作法な足音が聞こえた。
(何――?)
疲労で頭も体も上手く動かない。




