1.帰還 1
短かったので、本日2つ目の更新です。
アブルード国へは、サヴィス王国からスベイン皇国を途中経路とした。
ローラとラナは、スベイン皇国で生地の仕入れを目的としていた。
フィーナ達はその商団に便乗し、スベイン皇国まで行路を共にした。
その後、分かれてそれぞれの道を目指した。
「帰国はどうするか」
その話をした時、互いに期限を区切った。
この日までに、待ち合わせ場所に現われなかったら出発する、と。
「期限、過ぎてるよね……」
待ち合わせ場所にはローラ達商団の姿はなかった。
約束の期限から数日過ぎている。
待ちきれず、出立したのだろう。
時間制限があるのはフィーナ達だけではない。
ローラ達――名指しで明らかにするならラナ――も、セクルト貴院校に「休みは一月」と約束していた。
フィーナ達を待って、期限に間に合わなかったのでは話にならない。
期限に間に合わないフィーナ達を見限り、先に出立した判断に異論は無い。
むしろ、そうしてくれてありがたく想う。
ローラ達商団は、人の数が多く、統制も難しい。
日程の遵守は彼らの為でもある。
フィーナ達のように少数だと無理が利くが、ローラ達は難しいだろうと容易に想像できた。
馬車を走らせながら、フィーナ達は日程調整を検案した。
結論は「無理をすれば間に合う」だった。
「無理をすれば。……って、どれだけ?」
「馬を走行可能な限り走らせれば」
問うフィーナに、ザイルが朗らかに微笑んで答える。
ザイルの言う意味を理解できる騎士面々は動揺した。
意味がわからない者達は「そういうものか」と受け止める。
アブルード国出国後、往路より馬車の速度を上げている。
護衛としてアレックス、レオロード、リーサスが、それぞれ馬にまたがって周囲を警戒していた。
待ち合わせ場所まで、馬車としては無理な速度で走っていた。
それを続けるというザイルに、アレックスが訊ねる。
「馬が最後まで保ちますか」
疲労で途中で走らなくなるのでは。
「途中で替えますよ」
答えて、ザイルはアレックスとレオロードに、馬の手配を頼んだ。
往路で、二人は道沿いの親戚に金銭の工面を頼んでいる。
アレックスとレオロードに馬の工面を頼み、途中乗り替えれば可能だとふんだのだ。
ザイルの頼みを聞いて、アレックスとレオロードはすぐ、それぞれ独自の手段で親戚に連絡をとった。
そうした段取りをしつつ、荷馬車に乗るフィーナ達に、体の保護対策を講じた。




