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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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168.それぞれの事情 52


 アルフィードもプリエラもフィーナも、シルフィーの存在に押されて、何も言えず成されるがままだ。


 シルフィーがプリエラを指さして『お気に入り』と言ったときは、セレイスが「余計なこと言うな」と手を伸ばしてシルフィーを捕まえようとした。


 シルフィーは『おっと』と、ふわりとセレイスの手を避ける。


 避けざま、フィーナの元へ行く。


 シルフィーはフィーナを顔前でのぞき込んだ。


 驚くフィーナは、立ち尽くし、目をしばたたせる。


『――で。

 あんたが一番訳わかんないんだけど。

 なんでそんな途半端なの?』


「中途――半端?」


『中途半端で――……。

 ん~。なんか面倒。

 できるのに出来ない子。

 ……あれ? もしかして洗礼受けてない?

 ……ってか……うわ~。

 よく見たら……わ~。

 えっとごめん。

 今言ったのナシ。

 忘れて。

 恨まれるの勘弁だから。

 ……やば……。

 余計なこと言っちゃったかも……』


「え? えっと…………。

 え?」


 困惑するフィーナを置いて、シルフィーはひらりとセレイスの肩口に戻った。


 セレイスはシルフィーを捕まえようとするが、シルフィーはひらりひらりとかわし続ける。


 そうしながら、シルフィーは『それより』と、セレイスに訊いた。


『大丈夫なの? アイツに背いたみたいだけど』


「アイツが誰か、知っとんのか?」


『知ってるけど――セレ坊が知りたい意味では知らない。

 人の役職なんて、あたし達に関係ないもん』


「セレ坊?」


 首をかしげるプリエラに、セレイスは肩を落として息をついた。


「その呼び名、やめぇ言うたやろ。

 子供やないんやし」


 シルフィーはセレイスを「セレ坊」と呼んでいるようだった。


 幼少時の名残だろう。


 シルフィーは「い~」と口を曲げて反抗する。


 このまま口論しても落としどころがないと判断して、セレイスは質問を続けた。


「今までそないなこと、言わんかったやろ」


『聞かれてないもん』


 きっぱり言い切るシルフィーに、セレイスの口を閉ざす。


 確かに、訊かなかった。


 シルフィーがクラウドを知っていると、思いもしなかったから。


『気にしなくていいじゃん。

 セレ坊には関係ないんだからさ』


「関係ないわけないやろ。

 確実に目ぇつけられたはずや」


『だから。

 今のセレ坊には関係ないんだから、心配するだけ無駄なの』


「――は?

 どういう意味や?」


『さぁね~♪

 どういう意味だろうね~。

 けど、ホント。

 心配するだけ無駄だよ~』


『きゃははっ♪』――と。


 陽気な笑い声を残して、シルフィーはふっと姿を消した。





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