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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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167.それぞれの事情 51


 彼が――セレイスが……皇太子なら。


(あれは……どういう意味……?)


 困惑、混乱、混迷――。


 戸惑うばかりのプリエラの視界が、不意に陰った。


(…………?)


 不思議に思って顔を上げると、シルフィーが間近でプリエラをのぞき込んでいた。


「な……っ!  えっ!?」


 驚き、プリエラは後ずさる。


 驚きと――おとぎ話の中での存在だった、風の精霊シルフィーを間近に見て、気持ちが高揚した。


 鼓動は早鐘を打っている。


『ふ~~~ん……』


 プリエラをのぞき込んだシルフィーは、ふよふよと宙に漂いつつ、思うままの姿勢で、くるくる回っている。


 目が合ったとき。


 こちらを見ていたシルフィーは。


 ――プリエラを見定めようとしていた。


(値踏み、されてる……)


 思って、きゅっと胃の底が収縮する。


 それは――主に舞踏会で受けていた眼差しと似ていた。


 舞踏会に参加した当初。


 同年代、年上、年若の世代との交流の中、プリエラは参加する女性達と真摯に接していた。


 カドが立たない言い回しに気をつけつつ、諫めるべきだと感じたときには、遠回しに忠告した。


 それが彼女らの為だと思ったからだ。


 初めは上手く対処できていると思っていた。


 ――そうでないと気付いたのは、通りすがりの通路で聞いた、令嬢達の話からだ。



    ――注意なんて、何様のつもり


    ――自分はヒョロヒョロして棒きれみたいで魅力ないのに


    ――あの子の姉も、世間知らずよね。皇太子妃狙い公言して


    ――妹も妹なら、姉も姉ね



 少し前に、和やかに話していた令嬢達の皮肉めいた話に、プリエラは頭が真っ白になった。


 敵意も悪意も、露ほども感じさせなったというのに。


 人の心が――社交場のやりとりがわからなくなって以降、プリエラは隠れるようになった。


 それが余計、騎士への傾倒に繋がった。


 社交場でも時折遭遇した、相手を値踏みする視線。


 シルフィーは堂々と、正面からプリエラを眺めている。


 頭から足の先まで、無遠慮に何度も往復して。


 かと思うと、セレイスの元へ戻る。


『あんたが選んだにしては上出来じゃん?』


「え?」


「うるさい」


 シルフィーの言葉に、プリエラは首をかしげ。


 セレイスはシルフィーの額を、指でピンと弾いた。


『あたっ!

 なにさ!

 助けてあげたのにっ!

 あたしが居なきゃ、連れてかれたの、あんただったでしょ!』


「よう言うわ。

 面白がっとうたくせに」


『面白いに決まってんじゃん!

 こんだけ変わり種揃ってんだから!

 アイツの秘蔵っ子一族の末裔でしょ?

 んで、あんたのお気に入りでしょ?』


 アルフィード、プリエラを指さしながらシルフィーが話す。





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