表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
611/754

162.それぞれの事情 46


 現実は――知らないことばかりだ――。


「今一度問う。

 そなたの上司は誰だ?」


「――オーロッド様に……ございます」


「オーロッド・ウィグネードから、たくされたのであろう?」


 言ってクラウドが、フィーナが弾き落としたペンダントを掲げる。


 プリエラは当惑しながらもうなずいた。


 それらのやりとりを見たアルフィードは気付いた。


 セレイスと、情報提供の話をしたとき。 


 オーロッドはその場に居なかった。


 プリエラはセレイスの本当の素性を知らない。


 オーロッドは知っているようだが――セレイスの同行は極秘だ。


 セレイスとアルフィードのやりとりを、オーロッドは知らない。


 オーロッドはセレイスの配下でなく、軍に属する。


 軍からオーロッドに「アルフィード捕縛」の話がくれば、従わざるをえない――。


 アルフィードは、セレイスとオーロッドが一枚岩でないのではと、このとき思い至る。


 当惑するプリエラに、彼女の助力は望めないとアルフィードは察した。


 プリエラにはこの国での立場があるのだから。


 どうこの場を乗り切ろうか――。


 考えている時だった。


「そこの三人、こっちへ渡してもらおか?」


 プリエラに遅れて到着したセレイスが、いつの間にか側まで来ていた。



      ◇◇      ◇◇



 セレイスの後ろには検問の兵が続いている。


 止めてもお構いなしに進むセレイスに困っているようだった。


 セレイスが貴族とわかるので、強引に止めれない。


 国境の検問兵は、庶民出身者でまかなわれていた。


 彼らは、貴族との不必要な諍いを避ける傾向にあった。


「セレイス――」


 声の方を見たクラウドが、眉間に皺を寄せる。


 名を告げられ、セレイスは驚きに目を見張った。


 驚きもつかの間、すぐに皮肉を含んだ笑みを浮かべた。


「俺のこと、知っとるんか」


 セレイスはオーロッドの隊の一員だが、それは非公式だ。


 オーロッドの隊にしか顔を出さないので、他の隊、軍の者もセレイスを知らない。


 それなのにクラウドは一目見てセレイスと知った。


 セレイスはアルフィードに目配せした。


 ――彼がクラウドか。


 眼差しの意図を理解して、アルフィードはうなずく。


 疑念が確信となる。


「も一度言うけど。

 そこの三人はこっちで引き取るさかい、渡してもらえんか?」


「従う義理がない」


 きっぱりとはねつけるクラウドに、セレイスのこめかみがピキリと強ばる。


「穏便にすまそうしとんのや。

 言うこと聞けやボケ」


「セレイス――っ!」


 セレイスの発言を、プリエラが諫めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ