158.それぞれの事情 42
オーロッドの元で働くのに不満はない。
セレイスにどう接すればいいのか。
戻された当初、感じていた戸惑いは、今は消えている。
今、気になるのは――。
「手助け――されますか」
「もちろん、そのつもりや。
――役にたったどころやない。
ようやってくれたわ、あの嬢ちゃん」
クラウド
ルーフェンスの巫女の一切を取り仕切きる主。
それが――魔窟の主だろう。
儀式で従魔を覚醒させること、その儀式にルーフェンスの巫女が必要であること。
従魔はルーフェンスの巫女に心酔し、グランドマスターと契約している。
(逆らえんわけや)
思い出すのは、父の――皇王の、諦めの表情――。
従魔は国の大きな兵力だ。
その戦力を握られていては、反論もままならないだろう。
セレイスとしては、アルフィードが知れるとしても「頂点にいる者」の容姿と名前くらいだろうと思っていた。
それを元に、極秘裏に調査するつもりだったのだが。
内情まで知れるとは、思ってもいない収穫だった。
アルフィードは約束を果たした。
今度はこちらが応える番だ。
セレイスは、自分の名を――皇太子としての名を使って、検問に便宜を図るよう、通達を出した。
通達が効力を発するまで、一日はかかる。
早朝には検問所に向かうと、手紙に書かれていた。
セレイスはプリエラに、検問所の封鎖と足止めの協力を頼んだ。
「必要な書類は準備するさかい」
書類が揃うとすぐ、プリエラはセレイスとオーロッドを置いて飛び出し、今に至る。
アルフィードは出された書類に、指示されるまま書いていく。
「検問の時に、係の者に見せてください」
言われて、アルフィードはしっかりと書類を受け取った。
「それと――」
プリエラはポケットから小ぶりの布袋を出した。
「これをつけてください」
中を見ると、ペンダントが入っている。
「目印とのことです」
「目印――」
アルフィードは、セレイスと連絡をとるために持っていたペンダントを思い出した。
今回も何かしら効力があるのだろう。
言われるまま、布袋から出して、首元にかけようとしたアルフィードだったが。
「――っ!?
ダメ!」
何かに気付いたフィーナが、アルフィードの手をはたいて、ペンダントをつけるのを阻止した。
ペンダントはアルフィードの手から、床へと落ちる。
「フィ、フィーナ?」
アルフィードは驚いて、妹を見た。
同じく、プリエラも驚いている。




