157.それぞれの事情 41
アルフィードを連れて館を出たのは、彼女を捜索していた故郷の者だった。
その後、アルフィードの妹を始めとする捜索メンバーと合流。
体調も回復したという。
アルフィードを捜索するメンバーの一人が、仕事柄、様々な国を往来している。
アブルードもその一つだった。
その経験から、捜索メンバーとなったようだ。
出国手続きは、その者に従うと、アルフィードの書面に書かれていた。
――可能なら。
同封した情報が有益と思われるなら。
出国の手助けを、していただけないでしょうか――
最後に書かれた内容を、セレイスはプリエラに伝えた。
驚いて、プリエラはセレイスを凝視する。
――一騒動あってから、プリエラはセレイスを避けていた。
鈍いオーロッドが気付くほど、あからさまに避けていたというのに。
(忘れてんのやろうなぁ……)
それが嬉しくもあり、悔しくもあり――寂寥に駆られもし……。
プリエラらしい――自己の都合より、相手を思いやれる性分。それを感じて嬉しかった。
しかし彼女に気に入られた相手でなければ、そうした行動はとらないとわかる分、相手に嫉妬する。
そして――自分には、喜怒哀楽、どれであろうと、感情を波立たせはしないだろうと容易に想像できて――。
寂しさで泣きたくなるような感情が去来し、胸が痛んだ。
そうした感情を、セレイスは表に出すことはなかった。
プリエラは、話したセレイスの意図を理解している。
「――いいのですか」
「決めるのは、あんさんや。
無理強いはせんよ。
せえへんけど……状況次第でどうなるか。
子供やないんやから、それはわかるやろ。
すまへんが、アルフィード嬢を逃そう代わりにあんさんが捕もうて、尋問
受けても。
俺は手助けできんよって。
アルフィード嬢の手助けしたいんやったら、投獄される覚悟は持ちいや。
「投獄されるかも」やなし「投獄される」覚悟ないんなら、手を引きぃや。
関わんのが一番や。
あとなぁ。
家族にも、少のうないとばっちりがある覚悟は持っとき。
それが「嫌や」言うて。
「家族は関係ない」言うんなら。
こういう話をしても引き下がらんお人が性質悪いわ。
忠告したで?
関わらんようにって」
プリエラも――彼の想いと、その後のやりとりは覚えている。
アルフィードの出奔後、オーロッドの配下に戻された。
指示を受けてのことだった。




