表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
602/754

153.それぞれの事情 37


 シンは、フィーナに伝わったと知らない。


 フィーナは複雑な気持ちで、シンから伝わってきたことを「なかったこと」にした。


 知られたくないだろうと思ってのことだった。


 一行は順調に国境検問までたどり着いた。


 問題は、その後だった。


 その日は、検問に長蛇の列が並んでいた。


 なぜかと、シンが前方に並んでいた人に聞く。


「門が開かないんだ。

 上官を待ってるとか何とかでな」


 答えを聞いた誰もが、アルフィード捜索のためだろうと考える。


 待っているのはリュカか、クラウドか――代わりの者か。


「――いざとなれば、わしがアルフィードを連れて振りきるが――」


 シン達商団の前に、カシュートとゲオルクが並んでいる。


 別個の部隊だが、同じ故郷のよしみで数日前から行動を共にしている設定だ。


 ウソではない。


 親族がそれぞれの部隊に分かれてはいるが。


 検問待ちの理由を聞いて、申し出たゲオルクが、みなまで言い終わらないうちに、カシュートが、ゲオルクの胸元に笑顔で「ダンっ」と、裏拳を打ち付ける。


「余計なこと、せんでいーから。

 仮にそうしたとして、じーさまの体力に、アルが耐えれないから」


 あはは~。


 と告げる表情自体は明るいが、底暗い闇を感じさせる雰囲気を纏っている。


 強めの裏拳を胸にくらったゲオルクは咳き込み、カシュートの強い拒否を感じ、案を取り下げた。


 とりあえず、このまま状況を見ることにした。


 一刻もしないうちに、列が流れ始める。


 検問所が開いたようだ。


 ゆっくりだが進む列に安堵しつつ、近づく検問に緊張が高まりつつ。


 そうした中、前方がざわめいた。


 ざわめきは次第に後方へと移っていく。


 激しい蹄の音が、次第に大きくなると同時に、聞こえる声もハッキリとしてきた。


「~~~嬢っ! エルド嬢っ!

 居るなら返事をっ!」


 女性にしては低い声だった。


 声を聞いたフィーナ達が、警戒に身構える中。


 一人だけ、嬉々とした声を上げる者がいた。


「プリエラ様っ!?」


 叫びながら、アルフィードは隠れていた箱から飛びだす。


「え!? 

 ちょっ、お姉ちゃ――っ!!」


 姉の、思わぬ行動に、フィーナは反応が遅れて止められなかった。


 伸ばした手が、むなしく空を切る。


 アルフィードの行動は、誰も想定できなかった。


 あっけにとられる面々をそのままに、アルフィードは荷馬車から降りると、声の主を探して――。


「っ! アルフィードっ!!」


 金髪を振り乱して――馬から転がり落ちるように降りたプリエラは。


 アルフィードに駆け寄ると、ひっしと抱きしめたのだった。



     ◇◇     ◇◇



「どれだけ――っ!!

 心配したと――っ!!」

 

 力強い抱擁に息苦しさを覚えながら、アルフィードは泣きそうになるのを我慢した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ