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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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146.それぞれの事情 30


「これは?」


「豚汁もどき。炊き出しの定番だな」


 席についてフィーナがシンに訊ねる。


 答えたシンに、続けてフィーナが訊ねた。


「食材の中に木の根っこがあったけど……それも入ってるの?」


 椀の中を疑惑の眼差しで探るフィーナに、シンは苦笑した。


「それで国際問題になったの、歴史であったな。

「捕虜に木の根を食べさせた」とか。

 木の根に見えるけど、違う。立派な食材だ。

 この世界でも、食べる風習あるかは不明だけどな。

 ちゃんと調理すれば、美味いんだ。

 これがないと、風味出なくて物足りないんだよ。

 ただ……こっちの世界、洋食主体だから、和食が口に合うかは責任持てんが」


「ヨウショク? ワショク?」


「フィーナに教えてたのは主に洋食系。

 これは……今までのと違うだろ?」


 言われて――フィーナも何となくだが違いを感じた。


 違うと思っても、なぜかはわからない。


 首をかしげつつ、皆の席に準備された料理を、それぞれが席に着いたのを確認して食しはじめた。


 静かな食事だった。


 マサト由来のフィーナの料理の時は、経験のない料理に驚愕し、珍しさ、おいしさに沸き立っていた。


 しかし今回はいつもと様相が違った。


 珍しく、これまでに食べたことのない味には変わりないのだが、興奮はしない。


 興奮はないが「ほう……」――と。


 体から余計な力が抜けて落ち着ける料理だった。


「はぁ~。やっぱいいな、これ」


 つぶやくシンに、同席した面々は同調してうなずいた。


「不思議な……味わいですね。

 これはこれでいけますが」


 言いながら、ザイルが材料を確認している。


 食べ慣れた食材ばかりなのに、何が違うのか、不思議がっていた。


 フィーナも、意外とおいしくて驚いた。


 これまでの料理のように「おいしいから食べたい!」と違い、「疲れた。これ食べたら疲れがとれそう」と思える料理だった。


 だから余計、気になって仕方なかった。


「木の根っこって、これ?」


 フィーナは腕の中を探ると、それらしき薄切りを箸でつまみ上げ、シンに訊ねた。


 薄い楕円形の食材。


 薄いので口に入っても、誰も気にならなかったが、フィーナの一言に場がざわついた。


「木の根?」


 フィーナの隣に座るカイルが目を丸くして眉をひそめる。


 同席した面々は、同様の表情を浮かべた。


 シンとしては想定内のことだった。


「違うってさっき言ったろ」


 シンは台所に行くと、奥から細長い物を持ってきた。


「これだよ。

 ゴボウって言うんだ」

 



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