143.それぞれの事情 27
『察しがよくて助かるよ。
人の姿に変じた従魔、魔法の使用方法を変えた従魔、従魔の地位を向上させた者――。
そんな風に言われてたよ。
興味なかったけど。
姿変えたのだって、生まれ変わる前の記憶があった分、ホント動きづらかっただけだし。
どうにかしたくって、人に変わる方法探して、できただけだし。
なんでか――「変われそう」とずっと思ってた。
どうやってかはわかんねーから、闇雲に試してたら偶然できたんだ。
それからコツを覚えて、人でいる時間が増えた。
――人になったらなったで、唐突に違和感あるんだよ。
この姿じゃないって。
そんな風に、人と従魔の姿繰り返してたから、姿が変えられるのは周知の事実になって、宿主を介しての魔法の件もあったから、新たな道を示したとして神従魔と呼ばれるようになった。
呼ばれても返事しねーけど。
――アルフィードの見てたらわかるだろうけど――巫女を介して魔法は使いたくなかった』
「先ほど、逃亡できないよう創主と契約していると言っていましたが……」
なぜサヴィス王国まで逃げられたのか。
訊ねるザイルに『あ~……』と、マサトは困り顔で頬をかいた。
『今は、そうなってるらしい。
俺が逃げるまでは「逃亡不可」的なのはしていなかった。
俺が逃げた時、どさくさ紛れで逃げたヤツもいたから、繰り返さないように追加したんだろうな。
……俺も覚醒直後は記憶ないから、何されたか何したか、覚えてないんだよ。
覚醒従魔は巫女に心酔するから、逃げるとは思ってなかったはずだ。
いつどこにいるか。
感知できるようにはされてたはずなんだが……』
マサトはチラリとフィーナを見た。
『追手も、一度きりだしな……』
森での襲撃後、マサトなりに気を張って周囲を警戒し、ザイルに「知識」を餌に警備を手伝わせた。
襲撃されたとき被害がないよう、フィーナから離れていた。
……が。
以降、襲撃されることはなかった。
それが逆に、マサトを困惑させた。
マサトの位置を確認できているのか、いないのか。
襲撃は偶然だったのか否か――。
張り詰めていた神経も、日を重ねるごとに緩んでいった。
――アールストーン校外学習。
――アルフィード拉致。
気を抜いたころに事件が起きる。
関連性は見えないが、一つだけある共通点。
それが、アブルード国だ。




