142.それぞれの事情 26
『おそらくリュカは、覚醒して間もないから、宿主が定まってない。
宿主と従魔にも相性があるから、すぐには決まらないだろう。
宿主が定まってれば、アルフィードの魔力で魔法は使わない。
もし――ってか、絶対、リュカは国境付近にいる。
ヤツがアルフィードを感知できるから。
リュカには気をつけておいてほしい』
マサトの話は、アルフィードとリュカの状態を明らかにし、注意を促すためだ。
アルフィードはうなずいて了承を示した。
『――で。
殿下の魔法なんだけど――』
言って、マサトはカシュートとゲオルクに目を向ける。
『俺ばかり話すのも何だから、そっちが説明してくんねーかな?』
訳:ちっとはそっちの手の内明かせ。
同席する面々は「訳」を感じ取った。
ゲオルクはカイルの魔法を知っていた。
説明できるはずだ。
マサトの言葉に、カシュートは首をすくめる。
「話してもいいけど、君みたく理路整然としてないよ?」
『いーから話せよ。腹黒タヌキ』
「タヌキって何かわかんないけど、けなされた雰囲気は伝わるね~。
じゃあ言うけど。
――殿下にアルフィードのような状態が出なかったのは、伴魂との長い繋がりがあってこそです。
伴魂との関係で、魔力が往来する通路が踏みならされ、堅調となっております。
その堅調な通路を使用して伴魂が魔法を発動させたので、殿下に影響はありませんでした。
――まずをもって、多大な魔力量があるため、アルフィードのような理不尽な使用をされても、数回は影響ないでしょうが。
……って、こんな感じだけど?」
途中、カイルに頭を下げて説明し、最初と最後はおどけてマサトに告げる。
『ま……まぁまぁじゃねーか……』
から笑いのマサトに、同席する面々は、想定以上の返答だと知る。
「――あとは……」
それまで聞くに徹していたゲオルクが、口をつけたカップをことりとテーブルに置いた。
「なるようになれ、だな」
「じーさま、それ今言うことじゃないから~」
万全を期そうとしたところへの、成り行き任せのゲオルクの発言。
カシュートが助け船を出しても、ゲオルクはピンときていなかった。
◇◇ ◇◇
「アブルードの精鋭兵は、人の姿をした転生従魔と主で、主がおらずとも、転生従魔は脅威――ということでしょうか」
ザイルのまとめに、マサトはうなずいた。
『まさか自分の為の行為が、自分に返ってくるとはな』
と、皮肉を交えて笑う。
「神従魔とは、先駆者だからですか」
リュカがマサトを――シンを指して告げた言葉。
覚えていたザイルは、マサトの説明からそう感じた。
 




