132.それぞれの事情 16
アレックスは常々、カイルの評価の低さに不満を抱いていた。
ルディ、オリビア、カイル。
第一子のルディは第二王妃の子だ。
第二子で正妃を母とするオリビアは王位継承権第一位である。
生まれ順に関係なく、正妃の第一子を王位継承権第一位とするのは、血筋を重んじる為であった。
王の寵愛だけでは正妃とはなれない。
愚鈍な女性を正妃とした結果、クーデターが起き、長い内線が続いた過去を戒める為だ。
血筋、素養、教養。
全てを鑑みた上で正妃となる。
――そうしながらも。
国王と正妃の仲が冷えている代もあった。
その二人も国責として、跡取りはもうけた。
それほど、サヴィス王国では血筋、正妃は重んじられるものであった。
オリビアの地位は堅実だが――ルディの存在、伴侶候補の選定難儀が、足を引っ張っていた。
現段階で、オリビアの婚約者は確定していない。
候補があっても当人および関係者各位(ここではオリビアを擁護する者たちを意味する)が足並みをそろえられないだろう。
そのような思惑の中でも、カイルは蚊帳の外の存在だった。
アレックスはそんなカイルの評価の低さに、忸怩たる思いを抱いていた。
納得できなかった。
第三子だから、第三王妃の子だから――。
生まれ順、生母の位しか見られていないのにほぞを噛んでいた。
生まれ順、母親は変えようもない。
せめて生まれ順、生母関係なく、純粋に個々人の能力を評価してくれないだろうか。
セクルト貴院校に入学する前は、カイルはわがままが目立っていた。
それが貴院校に入校以降、アレックスでもハッとする能力、素質を見せている。
セクルト貴院校のカイルの成績は、常に上位だ。
試験の点数、総合順位を総合的に見た時。
成績は長子ルディの成績以上、オリビアの成績も凌駕していた。
カイルは評価されるべきなのだ、本来ならば。
王宮内でも政治的にも噂にならないのは、カイルの立場のためであった。
希有な能力が公になれば注目を集め、結果、カイルの有能さが知れるだろう――。
カイルの成長を感じ、アレックスは自分が仕える相手として、カイルに傾倒していた。
だからアレックスは「内密に」と告げるカシュートの意図がわからなかった。
カシュートはアレックスの不満もくみ取って、理由を話した。
「名が知れるのが有益ばかりと限らないのですよ。
一番は危険性――ですね。
使用を強要されなどしたら、動揺して失敗する可能性もあります。
そうしたとき――不利益を被るのは殿下にほかなりません」




