129.それぞれの事情 13
熟考のあと。
「――わかったよ」
ため息をついてシンは。
するりと。
その身を、ネコの伴魂――マサトへと転じたのだった。
◇◇ ◇◇
「っ!!??」
――とん。
……と。
軽い身のこなしで、面々が囲うテーブルに乗る。
シンという人から、マサトというネコに姿を変えた様を目の当たりにして、居合わせた面々は呆然とした。
予想してフィーナも、実際目の当たりにして唖然とした。
けしかけたのは自分だが。
想像と現実の差に、驚きを隠せない。
「やややや、やっぱりね! そんな風に変身するんじゃないかって思ってたのよ!」
フィーナは強がって、ビシリ! と、シンに指を突きつけて言うものの、動揺が隠せていない。
どもる様子からフィーナの心境は周囲にも知れている。
知れているものの、動揺する心情は誰もが理解できた。
(――そんなに……簡単に?)
『簡単そうに見えるけど、簡単じゃねーよ』
戸惑うフィーナの心の声は、伴魂にも伝わっていた。
シンの――マサトの声に、呆けていた面々がハッと意識を取り戻す。
『気持ちを落ち着かせないと無理だし、集中力も必要だ。
場所との適合もあるみたいで……自分でもよくわからんが、できない時もある』
「姿を変えられる」「変えられそうにない」と、感じ取るのだという。
それに関してなぜか、マサト自身わからず、説明できないらしい。
『――で?
何が知りたいんだ?』
フィーナは訊ねるマサトに戸惑いながら、小さく息をのんだ。
「――どうして、隠してたの」
騎士のシンと、フィーナの伴魂、マサトが同一であると。
想定された質問に、マサトは眉間に皺を寄せて目を閉じ、ピクピクと耳を動かした。
『む~……』と、考え込んでいる。
『隠すつもりはなかった。
話すことでもないと思ってたから。
その件で責めるんだったら――相手は俺じゃねーだろ』
マサトはため息交じりに告げると、尻尾でビッとリーサスを示す。
突然矢面に立たされたリーサスは
「は? ……え? ……え!? 俺――私……!?」
――と、自分を指さし、戸惑っている。
戸惑うリーサスにシンが重ね添えた。
『俺は隠すつもりなかった。
騎士になる気はなかったから。
うやむやのうちになっちまったけど、すぐやめるつもりだったし。
責められるとしたら、止め時を見誤ったことだな。
――なあ、リーサス。
俺、何度も言ったよな?
騎士にはならないって。
頼み込まれて受けた後も、何度も言ったよな?
やめるって。
やめようとするたびに、お前に止められたよな?』




