128.それぞれの事情 12
伴魂は基本、主にしかなつかないが、主の家族には気を許す。
アルフィードの伴魂は有名なので、アレックスもレオロードも覚えていた。
「ところで――」
合流してからずっとソワソワしていたアレックスが、おもむろに口を開いた。
「先ほどの――魔法……? ですか?
あれはどういうことでしょうか」
カイルとゲオルクを交互に見る。
カイルは戸惑い、ゲオルクを見た。
ゲオルクが答えようと口を開こうとしたとき。
「ごめんなさい。その前に、いいですか?」
椅子から立ち上がって、フィーナが口を開く。
誰もが怪訝になる中、フィーナは携帯食を頬張るシンに目を向けた。
「どういうことか――みんなの前で説明して。
シン――いえ、マサトと、呼んだ方がいい?」
告げるフィーナに小屋で合流した者達は驚いた。
「「「――マサト?」」」
――と。
シンに告げた名に、アレックスとレオロード、リーサスがきょとんとする。
当のシンは、口に含んだ水を盛大に噴き出したのだった。
◇◇ ◇◇
ガハゴホとむせつつ、シンは口元を腕で拭った。
「そ――それっ!
今、聞くことか!?」
「今じゃなくていつ聞くの。
ってか、何度も説明するの面倒だろうから、聞くの、今までが我慢してあげたんだけど。
そっちから話す気配なさそうだし」
「俺は先にフィーナに説明してからと思ってーーっ!」
「それっていつ?
サヴィス王国に帰ってから?」
「――せめて今夜、みんなが寝た後に――」
「国境、簡単に越えれるの?
追手がかかって、一悶着あるかもしれないのに?
事情を知ってるのは私だけじゃない。
関わったのも、事情を知った人たちだけじゃない。
これから大変かもしれないのに、疑心暗鬼じゃ連携とれないでしょ」
「――それは……」
口ごもるシンの肩に、ゲオルクが手を置いた。
いつの間に背後に来ていたのか。
振り返るシンに、ゲオルクが静かに告げる。
「信頼を得るには、手の内を明かすことも必要だ。
隠し事ばかりの者を、誰が信じられる?」
「――――…………」
ゲオルクに言われて、シンもハッとした。
主の――フィーナの感情に疑念が色濃く現われていることに。
アルフィードとザイルはフィーナとシンを伺うように見ている。
カイルとアレックス、レオロード、リーサスは、事情がわからず戸惑いながらシンとフィーナを見ていた。




