123.それぞれの事情 7
「俺たちもツテを持ってるんでね。
それで知ったってことにしといて」
肩をすくめて告げるカシュートに、それ以上、追求しても答えてくれないだろうと、フィーナは感じた。
「――カイルのこと、どうして知ってるの?」
カジカルの文献探しでドルジェに滞在した際、リオンとロアの両親にカイルは「貴族籍の子息」と伝えていた。
二人とも信じた。
エルド家の人間はフィーナとアルフィード以外、カイル=第二王子と知らないはずだ。
ゲオルクも初対面のはずなのに、初めから知っていたようだ。
カイルの――能力も。
「転移魔法は前、使っただろう?」
「――え……」
淡々と告げるゲオルクに、フィーナは驚く。
声は、馬車内に聞こえていた。
カイルにもアルフィードにも、ザイルにも聞こえている。
「なぜ、それを――」
知っているのかとカイルは驚き、アルフィードとザイルは「そんな魔法をカイルが使ったのか」と驚いている。
驚かないカシュートはゲオルク同様、カイルの魔法を知っていたようだ。
「気配から察した」
さも当然と答えるゲオルクに、フィーナ達は困惑する。
「えぇ……ぇえぇとぉぉ??
その場にいなくても、誰か魔法使ったら、誰がどんな魔法使ったか、おじいちゃんはわかるってこと?」
「変わったもの、威力あるものに限るが」
「感じるって――」
それって普通なの?
困惑して、フィーナはカシュートに助けを求める。
カシュートは肩をすくめて苦笑した。
「前から知ってたろ。
じいさまの特異性は。
俺も理解できないとこ、多々あるから「こういう人だ」って見切りつけないと頭おかしくなるぞ?」
乾いた笑いを漏らすカシュートは、全ての理解を諦めているようだった。
「ま。その辺の事情は、おいおいわかってくるよ。
慣れと――これから得る知識でな。
まだ学生なんだ。
学ぶべき事は別にあるだろ?」
困惑するフィーナにカシュートは話すと、同じく困惑するアルフィードにも顔を向けた。
「話すなら、フィーナと一緒がいいだろうって、前から決めてたんだ。
アルに隠してたわけじゃないからな?
誤解しないでくれよ?」
言って、未だ顔色の優れないアルフィードに苦笑する。
アルフィードはどう返事をしていいのかわからず、何も言えず、うなずくなどの反応もできなかった。
未だ体調不良のアルフィードを気遣い、ゲオルクが脈をとって様子をみる。
「もうしばらくの辛抱だ。
小屋に着けば、置いてきたあれが助けになる」
「あれ? って?」
不思議に思ったアルフィードの思いを、同じ疑問を持ったフィーナが口にする。
(――「っ!! あ゛ーっ!!」)
首をかしげたフィーナの意識下に、シンの叫びが飛び込んできた。
 




