122.それぞれの事情 6
禁忌となるのは、人から伴魂に触れる場合だ。
伴魂からなら問題ない。
問題ないのだが――。
人から他人の伴魂に触れる。
それが禁忌となったのは、二つの理由がある。
一つは、触れられる伴魂の強い嫌悪感があった。
主以外に触れられたくないと思うのだ。
もう一つは、触れる人に属する伴魂の嫉妬があった。
主が他の伴魂に触れようとするのは、自分より気に入っているのでは――。
そうした感情から、主と伴魂の連携がうまくいかなくなった記録もある。
しかしオズマの行為は、フィーナの伴魂から嫉妬をかうことなく。
伴魂自身が望んでじゃれついているので、伴魂の嫌悪があるわけもなく。
条件をクリアしたものであった。
――フィーナ自身は。
オズマにもみくちゃにされて、いらぬ労力を費やした。
しばらくすると、満足いくまで遊べたオズマは落ち着いた。
対処したフィーナはゼーハーと息が荒い。
「――だから……カイルのことだけど……。
どうしてオズマ野放しにしたの?
もみくちゃにされたって、カイルのこと、うやむやにするわけないのに」
フィーナは、ゲオルクがオズマをけしかけたのは、カイルの一件を煙に巻こうとしたからだと思っていた。
しかしフィーナの言葉にゲオルクは首をかしげた。
フィーナは「あのねぇ」と苛立ちを交える。
「オズマとじゃれてる間に、カイルの質問をなしにしようとしたんでしょ?」
フィーナの言葉に、ゲオルクと――なぜかカシュートも同調して首を横に振った。
「オズマの息抜きだ。
フィーナとアルフィード、二人に久方ぶりに会った嬉しさで、尋常でないほど興奮していた。
触れ合いで、ガス抜きを期待した。
オズマも満足したようだ」
告げるゲオルクの言うとおり、ひとしきりフィーナにじゃれついたオズマは落ち着きを得ている。
幼い頃から、オズマと遊んでいた。
いつの頃からか、ゲオルクは頻繁に諸国散策するようになり、年に数日しか会えない年が続いた。
それはオズマに会える機会も同等に減少したと意味している。
なぜかオズマは、アルフィードとフィーナに特別なついていた。
久しぶりに会ったときは、フィーナもアルフィードも、オズマを存分に構うのだが、今は状況が状況なのでやめていたが――オズマには関係ない。
ゲオルクの説明を、フィーナは釈然としないものの、受け入れた。
再度、フィーナは説明を求めた。
「俺たちがアブルード国に来てたのは、別件で――偶然っちゃ偶然なんだが――。
なるようにしてなったってとこもあるか」
カシュートが頭をかきながらぼやく。
「お偉いさんの考えてることなんざ、わからんよ」
「――お偉いさん?」
ゲオルクのことかと思ったが、当人は無反応さから見るに、違うのだろう。




