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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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121.それぞれの事情 5


 聞いて――別の疑問が生じた。


 カイルが転移魔法を使えるのは間違いない。


 間違いないが――。


 ゲオルクは以前からカイルの能力を知っていたようだ。


 カイルの見姿だけでなく、王子であること、他の部分も知っているようでもある。


 なぜゲオルクが知っているのか。


 聞いたら答えてくれるだろうが、聞いたことに答えてくれるか。眉をひそめるところである。


 ゲオルクの答えは、的外れが多々あった。


 答えは間違いではないが、ゲオルクの知識を誰もが知っている前提で話すので、質問した側からすればトンチンカンな返答となる。


 ゲオルクもそのような状況を理解しているので、答えて、質問した側が「?」な表情をすると、そこで話を切るようになった。


 懇切丁寧に説明した時期もあったが、徒労に終わる方が多かったので、いつしかおざなりな説明しかしなくなった。


 祖父、ゲオルクから聞き出すには。


(コツがいるんだよね~)


 そのコツが、少々面倒だった。


 気になることはたくさんあるが。


 話の切り出しを決めて、フィーナはガタゴトと揺れる荷台の上で、祖父の側に行った。


 ゲオルクとカシュートは、側に来たフィーナを「どうした」と目線を送る。


「助けてくれて、ありがとうございました」


 言って、簡易な礼をとる。


 家族間では簡易なものでも礼をとることはない。


 家族に礼を送るのは、多大な感謝を表していた。


 ゲオルクとカシュートは呆気にとられた。


 フィーナが礼を送るほど逼迫した場だったのだと、二人は理解する。


 ゲオルクは静かにフィーナに告げた。


「無事で何より」


 ゲオルクの言葉に、フィーナは頭を下げた。


「――ところで」


 言って頭を上げたフィーナの顔には、愛想笑いを貼り付けている。


「いろいろ説明してもらえるかな? もらえるよね?」


「え。なに。その『真綿で締める』詰め方」


 引き気味のカシュートに「だって!」とフィーナは声を荒げる。


「わかんないことだらけなんだもん!

 どうしておじいちゃんとカシュートおじさんがここに――アブルードに居るわけ!?

 タイミング良すぎだし!

 それにカイルのことも――」


「――オズマ」


「どうして知って――っ!

 わっ!

 ちょっ、オズマ!

 やめてっ!

 そんなに顔っ……! なめないで~!」


 問いただすフィーナに、ゲオルクが静かにオズマの名を呼ぶ。


 主の命を受けた伴魂は、我慢していた、じゃれつき、甘えたい衝動のたががはずれて、尻尾を盛大に振りつつ、フィーナに飛びついて、盛大に甘えた。


 オズマはゲオルクの伴魂だ。


 伴魂は基本、主以外に触れられるのを厭い、主以外が伴魂に触れるのを禁忌と、暗黙の了解としてなっていた。




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