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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第二章 セクルト貴院校
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29.学年寮長【寮長の役目】

見切り発車になったらすみません……。

多分、書き直しはもうないと思うのですが……。

今回は掲載までに、結構、書き直しが多かったのです。



       ◇◇       ◇◇


 事はフィーナの知らない所で進んでいた。


「ブリジット・フォールズとフィーナ・エルド。部屋を元に戻しなさい」


 寮での夕食終了後、三学年寮長から一学年生は残るように告げられた。


 それぞれの食事を終え、食器を片付けた後、一学年生が並び座る列が一望できる位置で、三学年寮長であり、女学生寮総寮長であるテレジア・バーミュスと二学年寮長であるカトリーナ・ラフォード、そして寮母、加えて寮の監督を担う女性教師二人が並び立っている。


 そうした中、三学年寮長であるテレジアが、細い黒ぶちの眼鏡をついと上げた後、一学年生を見渡して口を開いた。


「これまでの状況を鑑みた結果、私達が出した総意です。

 学年寮長には、その学年を統率する役目があります。

 時には多忙を極めることもあるでしょう。

 そうした観点から、各学年の女生徒の中で最優秀成績を修めた人物が、業務をこなす点を考慮して、個室を与えられてきました。

 しかし今年の一学年生は、市井出身者であるフィーナが女生徒首席となり、彼女は同室者を求め、同時期、個室を求めた、成績は優秀であったブリジットと部屋を交代した次第であることは、みなさん、ご存知のことでしょう。

 個室という特権を得たのですから、それ相応の、学年寮長としての役務を、ブリジットには求めていました。

 ……ですが、彼女は特権に値する役務をこなせていないというのが、私共の総意です。

 個室は多忙を極める学年寮長の作業場でもあります。統率を取れない者に、個室は無用の長物。

 ここにいる私たちはそう判断し、フィーナ・エルドを個室へ、ブリジット・フォールズをサリア・スチュードとの同室へと、本来あるべき姿に戻すべきだとの結論に行きつきました。

 二人は早急に、部屋の移動を行いなさい。すぐには無理でしょうから、来週までには部屋を元に戻すように。いいですね?」


 肩の上で切りそろえたブロンドを耳にかき上げながら、テレジアは告げる。


 一学年生が座る席に対して並び立つ面々が、話しあってなされた結果なのだろう。


 が、当事者であるフィーナは寝耳に水の状況で、話についていけない。


 なぜそうなったのか、今のまま、サリアと同室ではダメなのか。


 フィーナとしては個室よりサリアと同室を望んでいた。


 テレジアの言葉に、一学年生がひそひそとさざめき立つ中、もう一人の当事者であるブリジットが「納得できない」と声を上げた。


「話が違いますわ。学年の長として統率をとればよろしいとおっしゃったはずです」


「――出来ていると思っているのですか」


「ええ」


 自信に満ちているブリジットに、テレジアはわずかながら眉をひそめていた。


 二人のやり取りからして、今日初めて持ちあがった話ではないのだろうとフィーナも感じられた。


 対面席に座るサリアにそっと目くばせすると、彼女も神妙な面持ちをのぞかせている。


 ブリジットと部屋を変えてから、食事の席も変えていた。同室者同士が対面席に座り、各学年寮長が一人、抜きん出た席をあてがわれている。


 ブリジットはテレジアと位置が近いので話しやすいが、フィーナは離れているので事情を聞きたくても発言がしにくい。


 自分が関わる事なのに会話に参加できず、意見を言うことも質問も出来ないまま、話が進んでいく状況に落ち着かない心地で、とりあえず状況を見守る事にした。


 ブリジットの発言に、テレジアはため息をついた。


「では、現在、何も問題がないと?」


「もちろん」


 胸を張って告げるブリジットをテレジアはしばらく見つめた後、つい、と視線を並んで座る一学年生に向けた。


「フィーナ、サリア。それとラナ。こちらへ」


 名を呼ばれ、フィーナはサリアと顔を見合わせた後、呼びかけに応じて席を立った。


 テレジアの元へ行くと、同じく名を呼ばれたラナという一学年生も側に来た。おどおどした様子で周囲を気にしている。


(あれ……?)


 ラナを見たフィーナは、目や瞼を赤くした様子を訝った。


 薄い藤色の髪、同色の瞳。腫れた目から泣いていたのだと思われた。


 テレジアはラナに気遣う眼差しを向けた後、そっと声をかけた。


「――伴魂の様子は?」


 声をかけられたラナは、顔をしかめて震える唇を必死にかみしめて俯いた。肩も小刻みに震えている。俯いたまま、顔を手でぬぐう素振りから涙しているのだろうと思えた。


 どうにか我慢して、細い息を長く吐き出したラナは、肩から掛けていた布製の小物入れをそっと開けて、テレジアやその場にいる者たちに見せた。


 つらそうに眉をひそめる面々の中、同じくそれを目にしたフィーナは、足元がすっと冷えるものを感じた。


(え――……)


 それは以前、感じたことのあるものであり、もう経験したくないと思う感覚でもあった。


 ラナがそっと見せてくれた小物入れの中には、肩から腹部にかけて包帯をまかれ、ぐったりとしているリスの伴魂が体を横たえていた。




今回は書き直しが多かったです。

今も未掲載分に大幅手を加えています。

当初、目的としていた内容からはずれた話展開になってしまって、読み直して違和感強くて、そうして当初、書こうとしていた内容が書かれていないからだと気付いて、大幅に付け加えました。

そうしながら、書き終えた内容は、それはそれで話の流れ的には残して置きたかったので、調整しながら書いてます。

今回の話は長目になる予定です。

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