118.それぞれの事情 2
◇◇ ◇◇
フィーナ達と別行動をとったカイル達は、打ち合わせ通り、国境付近の小屋に向かった。
小屋には――まさかの先客がいた。
それがゲオルクとカシュートだった。
二人を知らないカイル達は警戒した。
カシュートは人当たりのいい物腰と話し方で、警戒心を深めないよう努めながら、自分たちの素性を明かす。
フィーナの祖父と叔父と言われても、カイル達に確認する術はない。
「アルフィードの件は承知している」
事情を知り、駆けつけたのだと言う。
「御両親から……?」
フィーナは余計な心配をかけたくないから、アルフィード拉致の一件を、両親にはまだ伝えていないと言っていたはずだが。
訊ねるカイルに、カシュートは気まずそうな笑みを浮かべる。
「リオンとロア――両親は知らない。
俺たちは旅をする過程で知ったんだ」
フィーナ達の祖父が、様々な国を渡り歩いているのはカイル達も承知している。
その時の資料が、アブルード国を訪れてから役立っていた。
話す内容から、フィーナの親族だと思えたが――決定的な確証が不足していた。
カイル達が戸惑っていたとき。
目隠し布を巻いた鳥籠から、ピーピーと激しく鳴く声、ガタガタと暴れる音がした。
カイルの伴魂だ。
カイルはアレックスに同乗していた。
伴魂は目立つので、鳥籠に布をかぶせて隠し、レオロードの馬に同乗していた。
そのカイルの伴魂がバタバタと、羽を羽ばたかせて暴れていた。
暴れると同時に、カイルに意識下の声が届く。
(――『ホントだよ! その人、フィーナのおじいさんとおじさん!』)
驚いたカイルは、反射的に意識下で問い返した。
(――なぜ、わかる?)
(――『だってそうなんだもん! フィーナと同じだもん!』)
(――同じ? 何が?)
(――『うー……。よくわかんないけど、フィーナと同じ感じなの!
同じ感じだし、おじいさん、なんかすごいの!』)
意識下の会話と連動して、伴魂は狭いかごの中で羽をばたつかせる。
――伴魂独自の、何かしら感じとれるものがあるのだろうか。
伴魂との意識下の会話に集中していたカイルは、アレックスとカシュートの話を聞いていなかった。
「――王子」
声をかけられ、ハッとした時には、側にフィーナの祖父、ゲオルクが立っていた。
いつの間にかカイルに接近していたゲオルクに、アレックスとレオロードが警戒心むき出しにする。
ゲオルクに剣を抜こうとするアレックスとレオロードを、カイルは視線で止めた。
これまではカシュートが交渉していた。
ゲオルクは沈黙を保っていた。
彼が口を開いたのに驚きつつ――なぜか警戒心は起きなかった。
言葉少ない中、所作の中にこちらを敬う細やかな仕草がうかがえた。




