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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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115.シンという男 57



 聞き返されると思っていなかったフィーナは戸惑った。


「だって……サヴィス王国でない国で……。

 どうして私たちの場所がわかったの?

 助けてくれたのも、すごくタイミングよくて――良すぎだよ。

 危ないって、わかってたみたい」


「………………」


 フィーナの問いに、ゲオルクは渋面でしばらく考え込んだ。


 考えて、告げた答えがこうだった。


「なんとなくだ」


「な……なんとなく?」


「そうだ」


「そんなんじゃ納得できないよ。

 つけてたとか……あ、出国してから監視してたとか」


「――そう、そうだった。

 ずっと監視してた」


「もう! 嘘でしょ、ごまかそうとしている!」


「どう答えたところで、納得せんだろう。

 本当に「なんとなく」フィーナが危ういと感じて「なんとなく」向かったところでフィーナにたどり着いた。

 それ以上、今は説明のしようがない」


「――今は?」


 含みに気づいて、フィーナは追求した。


 ゲオルクはふいっと視線を逸らせ、アルフィードの方へ顔を向けた。


 場が静かになり、リュカを縛るのが遠目からでも見え、決着がついたと判断したのだろう。


 ザイルはアルフィードを支えながら、アルフィードはザイルに寄り添って、フィーナ達の側へ来た。


「――おじい様」


 アルフィードもゲオルクに驚きを隠せない。


 カシュートも――そして、伴魂を肩に乗せたカイルにも驚いた。


「おじ様――殿下も……」


 この場に居合わせる面々が、異国の地に居る理由。


 自分を助けるためだと……アルフィードも察した。


 戸惑いつつ――嬉しさと同時に恐縮してしまう。


 自分一人のために、何人もの手を借りて――迷惑をかけて。


 バツが悪い思いで、アルフィードは自然とうつむいてしまう。


 そのアルフィードの肩に、ゲオルクが手を置いた。


 驚いて顔を上げたアルフィードに。


 鉄仮面と揶揄される、表情の変化の乏しいゲオルクが、緩やかな笑みを向けた。


「無事で何より」


 オズマも甘えるようにアルフィードに身を寄せてくる。


「――――っ!」


 アルフィードは涙目になりながら、緩い笑みをゲオルクに返したのだった。




「だからね? 答えになってないからね?」


 なぜ居場所がわかった。


 なぜ危機的状況に気づいた。


 フィーナはその問いをゲオルクに続ける。


 ゲオルクはフィーナをあしらいながら、ザイルと馬車の状況、状態、自分たちの手荷物、行程を話し込んでいた。


 フィーナの問いに、適当ながらも的確な返答をしつつ、段取りを進めるゲオルクに、居合わせた面々は驚嘆していた。


 驚嘆しつつ、内心、それぞれの思いを抱えていた。


   ――他に気になることがあるだろう。


 ……と。


 シンは自分への追求を。


 カイルはこの場に居合わせるに至った状況を。


 カシュートはゲオルクとこの場に至った経緯を。


 アルフィードはそもそも論である、自分について。


 追求される心構えをしているのに、フィーナはそれらに触れず、ゲオルクを追求する。


 防御力の弱い先からでなく、最難関の攻略先を相手にした。




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