表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
560/754

111.シンという男 53


 アールストーン校外学習では、うまく発動した。


 混乱しなかった。


 なのに。


 今、なぜシンの過去の情景が脳裏に浮かぶのか――。


 それがなければ、動揺しないのに。


 前は――アールストーン校外学習時の襲撃の際は、そんなこと、なかったのに。


 アールストーン校外学習襲撃時との違いがわかず、困惑するフィーナの心情は、マサト――シンにも伝わっていた。


 ただ、シンに伝わっていたのは「困惑」の感情だけで、仔細までは伝わっていなかった。


 それでシンはフィーナが「実戦」に戸惑っていると解釈した。


 フィーナの困惑が。


 アールストーン校外学習時は、伴魂の声を「耳」で聞いて対処したのと。


 リュカにはどのような魔法が発動するか隠すために、意識下で前詞アンセルを唱え――意識下での前詞アンセルは、微量ながらも関係する意識が相手に伝わると、シンが知らなかったことに起因した。


 氷槍の襲撃を受けたリュカは、霧散した氷霧の先で、姿が見えない。


 戸惑うフィーナの新條にシンが気づききれない中。


 続けざまにシンが前詞アンセルを唱える。


(――『三つ! 光と水と火を用いて三方からなる障壁を成さん! 次なる術を用いて三位さんみ一体の了と成す!』)


「っ! 輝流焔きりゅうえんから成りし天網てんもう!」


 前詞アンセルに準じて唱えた呪文ルキが――。


 一度、発動が成功し、虹色に輝く糸で編まれた網が、霧散した氷霧の中のリュカを捕らえようと展開されたものの――。


 リュカを捕らえる前に、光の粒となって霧散した。


「「「!?」」」


 その場に居合わせた誰もが驚いた。


 フィーナもシン――マサトも、状況を理解しきれない。


 アブルード国で、戦場に参加していたマサトも、初めてのことだった。


 フィーナも、マサトとの訓練で、魔法が発動しないことはあっても、発動した魔法が無効化した経験は無い。


 シンの――マサトの前詞アンセルをもって唱えた魔法は、相手を捕縛しようとする魔法だった。


 敵対する相手を打破するとなると、命を奪う、抵抗できないほどの傷を負わせることになる。


 フィーナには過酷だと判じたマサトが、相手の魔法を無効化し、捕縛できるよう考えた魔法だった。


 相手の魔法を無効化し、捕縛するとなると、一つの魔法では対処できない。


 そこで考えたのが、いくつかの魔法を経てのものだった。


 属性、施行される魔法の有用性を吟味して、3つの魔法をフィーナに訓練させた。


 単独でも魔法として活用の場があるものを選定した。


 ――正直。


 アブルード国では使用していなかったので、どれほど有用性があるか、疑問だったが。


 ドルジェでの訓練では、疑似敵に「効果あり」との結果となった。


 以降、何度か不意を打っても、フィーナは対処できた。


 それが――まさかの不発。


 光の粒となって霧散した魔法で、氷の霧がリュカの周辺だけ開けた。


 それはフィーナとシン――マサトがリュカを目視できると同時に。


 リュカも。


 フィーナとマサトの居場所を確認できる環境にある状況だった。


 フィーナの魔法の氷槍は、攻撃魔法として強力だ。


 腹部に傷を負ったリュカは、警戒して二度目の氷槍に対処できたものの、三度目の氷槍に対処できるとは思えなかった。


 氷槍は、リュカにはキツい魔法だった。


 リュカは、シンとフィーナが何をしようとしているのか、理解しきれなかったが。


 霧散する魔法を見て――シンとフィーナの動揺を見て。


 その好機を見逃さなかった。


「っ!! フィーナ!」


 戸惑い、互いを見つめるシンとフィーナ。


 その二人に、リュカの動きに気づいたアルフィードが焦りの声を上げる。

 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ