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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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105.シンという男 47


 小声で話しながら、タイミングを伺う。


 作戦はすぐに実行された。


 防御ばかりだったシンが、リュカへと斬りかかる。


 押されたリュカは、後方に下がりつつ、フィーナにも注意する。


 ――が、シンが視界を遮って、フィーナの姿が見えない。


 そんな時だった。


水宴アクアフェスタ!」


 フィーナの呪文ルキを聞いて、リュカは反射的に警戒した。


 それがどのような魔法なのか、リュカは知らない。


 おまけにシンが視界を塞いでいるのでフィーナが見えない。


 このままではシンも道連れ――というより、シンに被弾するのでは。


 リュカが瞬間的に考えた時だった。


「今よ!」


 フィーナの声に反応して、シンが身をかがめた。


 シンが居た場所から――正確にはその後方から、突如、人の頭ほどの大きさのある水球が現れた。


「――――っ!?」


 避ける暇もなかった。


 それが何か、判断しようとする一瞬の間に、水球はリュカの顔に飛来する。


 水球をまともに受けて、リュカは反射的に目を閉じ、シンから気がそれた。


 顔を濡らす水に戸惑い、それが何かを理解しようと思考を巡らせ――水宴アクアフェスタを知らないため、軽く混乱した。


 そのスキをついて、シンはかがんだ姿勢から思い切りリュカの腹部を蹴りつけた。


 地面に手をつけて、腕の反動を加えての、急所を狙ってのものだ。


「――っ!!」


 リュカは後方に飛ばされ、倒れ込む。


 呼吸を阻害され、激しく咳き込み、痛みに悶絶した。


 不意を打たれた腹部への蹴激で、意識を失いかける。


「――やったか?」


 倒れ込んだリュカを警戒しつつ、シンはフィーナの側まで下がって、様子を見守る。


 フィーナの案は成功した。


 タイミングがうまくいくか賭けだったが、結果は上々だ。


 シンとしては屈んだ体勢から、剣を横凪にしたかったのだが、体勢を崩してうまくいかず、とっさに腹部を蹴りつけるのに変更した。


 急所をとらえた自信はあったが、どれだけ通用するか――。


 立ち上がるなと願うシンとフィーナの前で、リュカはよろけながらも体を起こす。


 腹部を押さえながら、苦痛に顔を歪めていた。


 シンは舌打ちして、剣を構える。


 フィーナも再度、マサトの気配を探って身構えた。


 リュカは腹部を押さえて咳き込んでいる。


 咳が止まると、視線を落として口元を腕で拭った。


「――…………」


 そのリュカの口元が、小さく動いた。


 何と言ったのか聞こえず、フィーナとシンは眉を寄せる。


 ――そのリュカの剣が、パリ。――と。


 光がぜた。


(――『雷――』)


「カミナリ?」


 意識下で聞こえたマサトの声に、フィーナが訊ねる。


 返事はなかった。


 代わりにと言うか――側に居たシンが、パリパリと音を立てて小さな光を帯び続けるリュカの剣を見て、息をのんで叫んだ。


「さっきも言っただろ!

 それはアルフィードの負担になるって――!」


「わかっていますよ。

 ですから先ほどより抑えているのです」





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