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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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104.シンという男 46


 リュカの標的はフィーナだ。


 シンがかばってくれても、その防御をすり抜けて不意を打たれた時。


 フィーナは対処できる自信がない。


(――だったら)


 これまで、自分の身を守る訓練はしてきた。


 その前提の方が動きやすい。


 マサトの姿は見えないが、側にいるとわかる。


 この距離なら、サヴィス王国の魔法は問題なく使えるはずだ。


 今は共に訓練をしたことのないシンが間に割って入る方が、邪魔で仕方なかった。


 フィーナも戦闘時は、相手の動きを想定して対処する。


 そんな時、他者の行動、視界を塞がれるのが「邪魔」でしかない。


 フィーナをかばおうとするシンが、まさにその状況だった。


 シンの剣技、武術がフィーナより優れていると、リュカとの攻防を見てわかっている。


 わかっているが、それとこれとは別だ。


 自身の身を守るためには、本気でシンが邪魔なのだ。


(――「マサト! 側にいるんでしょ!? いるよね!?

    姿見えなくても、いるってことでいいんだよね!?」)


(――『いるよっ!

    けどムチャしないで、そこのにーちゃんに任せろ!

    お前じゃ太刀打ちできねーから、そこのイカレやろーには!』)


「やってみないとわからないでしょ!?」


「っっ!

 耳元で叫ぶな、うるせー!」


「あなたの声も十分うるさいから!

 お互い様!

 いいからどいてよ!

 本気で邪魔!」


「それが手助けするヤツに言う言葉か!?」


「だーかーらーっ!!

 手助け必要ないって言ってるでしょ!?」


 シンはリュカの剣を受けつつ、背後のフィーナをかばう。


 視界不良の中、フィーナはシンの危うい場に簡易な魔法を唱えてリュカを牽制する。


 フィーナはフィーナで、マサトが側に居ない状態で――側にいると感じる状態で、どれほど魔法が発動するか、確認していた。


 今のところ、魔法は発動している。


 シンと混戦しながらのリュカへの対応も、どうにか形になっている。


 ――逆に、シンと息があっているのが、フィーナには不思議だった。


 体がぶつかるなど、互いの行動を阻害する場がほとんどなかった。


 なぜだろう。


 シンの動きが、ふっと感じ取れるのだ。


 不思議に思ったが、なぜかを考える余裕はなかった。


 シンとリュカに対応しつつ、マサトを呼び続けた。


 時折、マサトから返事があるが、いつも『姿をさらせない。けど側にはいる』とのものだった。


(――だったら)


 姿を現さないマサトに、フィーナも見切りをつけた。


 ダメなものを待ち続けても仕方ない。


 現状でどう対処するか、考えるべきだ。


「――ねぇ」


 混戦模様の中、フィーナはシンに、とある提案をそっと耳打ちした。


 不機嫌そうに眉を寄せながらも、シンはフィーナの話を聞いた。


「――了解」


 フィーナの提案を、口元を緩めてシンは承諾する。


「相変わらず、えげつねーこと考えんな」


「会ったばかりの人に言われたくないんだけど」





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