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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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98.シンという男 40


 反応したのは、伴魂のマサトではなくシンだった。


「邪魔だっつてんだろっ!

 逃げろって言ってんだよ!

 ザイル!

 お前も二人抱えて、こいつ相手できんのか!?

 俺の次はそっちろーが!!」


 止めているうちに距離を稼げ。


 早く国を越えろ――。


 シンの意図を察して、迷っていたザイルは行動に起こした。


 ――アルフィードとフィーナ、二人を右と左、それぞれを両脇にかかえると、荷馬車に放り込む。


 その行動にフィーナ達が驚き、現状を把握できずにいるスキをついて、ザイルは荷馬車を走らせた。


「ザイル!?」


 シンを置いていく行為に、フィーナが避難混じりの声を上げる。


 それには答えず、ザイルは馬車を走らせた。


 シンも騎士に籍を置く者だ。


 簡単には負けないだろうし、自分の身を守る術も心得ているだろう。


 リュカという少年は、アルフィードに固執している。


 アルフィードが離れれば、そちらを追うだろうし、シンとの戦闘にも興味をなくすだろう。


 アルフィードをシンから遠ざければ、シンとの戦闘も終わるだろう。


 代わりに、リュカはアルフィードを追う――。


 リュカにどう対処しようか、ザイルは迷っていた。


 アルフィードとフィーナ、二人をかばいながらたちまわるか、フィーナにアルフィードを任せて、リュカに対応するか――。


 なぜマサトが居ないのか、ザイルは焦る気持ちの中、考えていた。


 マサトが居れば、フィーナの心配はなくなるし、アルフィードも心置きなく任せられる。


 荷馬車が走る最中、後方で雷鳴が轟いた。


「――――っ!?」


 空は雲一つ無い。


 シンとリュカ、どちらかが用いたものだろう。


 フィーナとアルフィード、ザイルは大気を震わす轟音に驚いて後方を振り返る。


「――――…………!?」


 そうした中、アルフィードが目眩を覚えて座り込んだ。


 体の力が抜けて、視界がクラクラと揺れる――。


 目をきつく閉ざして目眩に耐える。


(なに……?)


 体から力が抜ける感覚だった。


 するり。――と、体の内部から何かが抜け落ちて――不意に欠けてしまったから、力が抜けてしまった。


 アルフィードの不調に気づいたフィーナが「どうしたの?」と訊ねた時だった。


「っ!!」


 ザイルが慌てたように手綱を引いて、馬車を止める。


 強引な停車に、フィーナ達も体が前のめりになってしまった。


「どうし――……」


 アルフィードを気遣いつつ、御者台のザイルに訊ねたフィーナは、行く先に立つ人を見て声を失った。


 リュカが、道の中央に立っていた。


 どうして――。


 リュカを見たフィーナは、緊張で体がこわばるのを感じつつ、同時に「なぜ」と思考を巡らせた。


 シンが足止めしていたはずだ。


 彼が追えない傷を与えたのか、彼の防衛をすり抜けてここまでたどり着いたのか――。


(でも――)


 こくりとつばを飲み込み、思う。


 国境までの主要街道ではすぐ追いつかれる可能性があるので、少しでも時間稼ぎができればと、当初、計画していた主要街道を外れた道を進んでいた。


 国境で待ち構えていたとしても、その直前にカイル達と合流し、アルフィードが潜む荷だけ彼らに託して国境を越えよう――。





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