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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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96.シンという男 38


 マサトが言うには、アブルード国では従魔を持つのも珍しく、ほとんどが国から下賜されたものだそうだ。


 全国民、伴魂所有するのが当たり前のサヴィス王国とは、大きく異なっている。


 フィーナが魔法を使ったから、宿主レイブラント保持者と思われたのだろうか――?


「あの程度の魔法、こいつの国では使えるヤツ、ゴロゴロいるけどな」


 フィーナの疑問を先取って、シンがリュカに牽制する。


 アブルード国で言うところの「宿主レイブラント」と万人が魔法を使えるサヴィス王国民は、意味合いが違うのだと含ませて。


 シンの言葉に、リュカはきょとんと目を瞬かせた。


 シンの言っている意味がわからない。


 そんなリュカに、シンは言葉を続ける。


「こいつの国では、誰でも生活魔法は使えるし、使えないヤツなんていないくらいだ。

 こっちでいう従魔も、自分たちでまかなっている。

 宿主レイブラントとかいう、特別なモンじゃあないんだよ」


 シンの話を聞いても、リュカは腑に落ちない表情のままだ。


「よくわかりませんが――あなたも同じでしょう?」


「同じ……?」


 自分を見て告げるリュカの言う意味がわからず、フィーナは戸惑い、つぶやいた。


 フィーナの方を見るリュカに、シンがハッとして顔をこわばらせて叫んだ。


「アルフィード!!」


「っ、はい!?」


 急に呼ばれたアルフィードが、びくりと震えて反射的に返事をした。


「あいつとはいつ、どこで会った!?」


 急に問われて躊躇しながらも、アルフィードは答えた。


「監禁された部屋で――」


「成功した儀式の後か!?

 従魔は居たのか!?」


 シンに助けられてからこれまで。


 行動を共にする中で、アルフィードはオーロッドに拉致されてからの経緯を、シンに話していた。


 儀式の話もしている。


 シンに言われて振り返った。


「――後でした!

 従魔は居ません!」


 思い出して告げるアルフィードの返事を聞いて、シンは苦虫をかみつぶした表情を浮かべた。


 リュカに注意しながら背後にかばうフィーナに、小声で告げる。


「――タイミングを見て、ここから離れろ。

 ザイルのとこに逃げろ」


「え……?」


 シンの意図がわからないフィーナが、戸惑いの声をつぶやいた直後、シンはリュカに攻撃を仕掛けた。


 体術と剣術を混ぜた攻撃だった。


 リュカは剣は剣で、体術には体術で応じていた。


 その間に、フィーナは言われるまま、ザイルの側に身を寄せた。


 姉とザイルの側で、シンとリュカの攻防を見守った。


 武に疎いアルフィードとフィーナでも、シンが劣勢だとわかる。


 シンは「もしもの時は自分を無視して逃げろ」と話していた。


「一人旅は慣れてる。逃げられればどうにでもできる」


 ――と。


 フィーナ達がこの場から離れれば、シンも時期を見計らって、戦線離脱するのだろうが――フィーナは自分でも理解できない不安を感じていた。


 シンを残してこの場から離れる方が、シンにもいいのかもしれないが――。





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