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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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92.シンという男 34


(なんだ――?)


 リュカは、自分でも理解しがたい感覚に戸惑っていた。


 アルフィード以外、この場に居合わせる誰も知らないはずなのに、どこか懐かしい感覚を覚えていた。


 リュカはなぜかわからず、戸惑いながらシンと剣を交える。


 リュカとシンでは、リュカが優勢だった。


 他をかばいながらのシンと、簒奪しようとするリュカとでは差が生じるのも当然だ。


 リュカはアブルード国軍内でも、一兵団の将と同等の実力だ。


 リュカ優勢の攻防の中。


 シンが地面の段差に足をとられ、大きく体勢を崩した。


 その一瞬を、リュカは見逃さなかった。


 シンに斬りかかったリュカの太刀は――。


硬盾デュスク!」


 シンとリュカの攻防を見守っていたフィーナの盾魔法で防がれた。


「「!?」」


 シンもリュカも、想定外の横やりだった。


 フィーナも二人の攻防に介入するつもりなど、露ほども思っていなかった。


 シンの危険を目の当たりにして、反射的に――気づいたら叫んでいた。


 同時に――呪文ルキを唱えたものの、発動するとは思わなかった。


 リュカの太刀を防げるとも思っていなかった。


 硬盾デュスクは、唱えた者の側で硬質な盾となる。


 唱えた者から離れれば離れるほど、盾は脆弱化する。


 そのため、硬盾デュスクは唱える者自身の、物的な盾代わりとしていた。


 他人を守る力はないとされていたのだが――。


 思わず唱えたフィーナの硬盾デュスクは、堅強な音と共に、リュカの剣を弾いてシンを守った。


 フィーナ自身、効力があると思っていなかったので驚いた。


 呪文ルキを叫んだときも、いつもと感触が違ったので「発動しない」と思っていた。


 発動したと言うことはマサトが意識下で話していたように、姿はこちらからは見えないが、近くに居るのだろう――。


 状況を把握しきれず戸惑うフィーナに、シンが声を上げた。


「手出しすんな! 邪魔だ!!」


 その声にフィーナはびくりと身を震わせ、体を萎縮させた。


 硬盾デュスクは運良く、シンの助けとなったが、もし発動しなかったらシンの思考を乱す行為でしかない。 


 シンとしても想定外の横やりは、たとえ助けとなろうとも迷惑だろう――。


 シンの叱責をフィーナはそうとらえて、反省した。


 ザイルはアルフィードを守っている。


 シンはリュカと対峙している。


(自分の身は自分で守る――)


 今はリュカだけだが、いつアブルード国側の援軍が来るかもわからない。


 それに備えつつ、シンとリュカの攻防の余波にも気をつけようと思ったフィーナが――ふと、シンを見た時――。


 シンに向けた視線が、シンと対峙するリュカと……一瞬。


 ほんの一瞬だけ、視線が交差した。


 目が合ったわけではない。


 当事者同士が意識するような、視線の絡みがあったわけでもない。


 フィーナとしては、シンに目を向けた視線の動きの中に、ほんの一瞬、リュカと視線がかすった認識だった。


 一秒にも満たない、刹那の瞬間――。


 いつもなら気にならないが、なぜか、ぞわりと肌が泡立つ不快感を覚えた。





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