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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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86.シンという男 28


 フィーナは連絡手段として、そのように考えた。


 側に居ないときの手段だ。


 輪には締め付ける呪文ルキ、解除する呪文ルキがある。


 その呪文は、所持者限定、道具に作用する魔法なので、伴魂不在でも発動する。


 連絡手段があると知り、アルフィードは安堵した。


 何事もなく、国境を越えられればいいのだが――。


 街の中心部、祭りの主会場から離れるに従い、人気も減っていった。


 箱の中のアルフィードも、都度、状況を教えてくれるフィーナの話で、外の状況を把握できる。


 フィーナ達と再会して、アルフィードは安心していたものの、不安がなくなったわけではなかった。


 国境に近づくにつれ、言いようのない不安は高まっていく。


 シンの話を、度々思い出す。


 気にしなければいいのだろうが、彼の話を聞いて、アルフィードも同じ考えを抱いた。


「これまで、何もないのが不思議でな」


 続けて、彼はこう言った。


「俺だったら闇雲に追跡するより、確実なとこで待ち構えるな」


 その確実なところまで距離があるので、すぐにでもアルフィードを手に入れたいだろうから、追手がかかるとシンは考えていた。


 それを考えて、多数対少数の場にならないよう、道を選んでいたという。


 ここに至るまで、一度も追手がなかったとなると――。


「どこで……待ち構えていると、思うのですか?」


 フィーナ達と合流する前、その話の流れでアルフィードはシンにきいた。


 シンは苦笑交じりに答える。


「関所だろうな」


 関所。


 国と国との境に存在し、通行許可証等、国を渡るに際して確認を行う場所。


 何をするにしても、身分証が必要だ。


 通常、提示は必要ないが、相手が何かしら思ったところがあると、提示を求められる。


 その際、提示する身分証は、関所で提示するものだ。


 どのような仕組みか明かされていないが、その身分証で正規入国か非正規入国か、わかるという。


 関所での手続きが関係しているのだろうと、シンは言う。


 アルフィードがアブルード国に入国した経緯も、シンは訊ねていた。


 アルフィードの話から、サヴィス王国で所有する身分証に影響はないだろうと推測する。


 アブルード国で、アルフィードの身の回りのことは、使用人がしていた。


 アルフィードは、身分証がなくとも生活できていた。


 それは一般社会との関係を絶っていたから、成り得たものだ。


 オーロッドと共に入国した時、アルフィードの身分証は必要なかったのだろう。


 ――位の高い、貴族の指示に、関所の者も従っただけでは。


 入国時の話を聞いて、シンはアルフィードを荷物に隠して国境を越えようと考えた。


 密入国者への対策は、関所での身分証の更新だ。


 密かに他国に入国しても、正規手続きをとらなければ、いつかどこかで身分証の提示を求められ、ボロが出る。


 密入国者は、大概初期に見つかる。


 言葉、生活習慣。


 それらの違いに周囲が気づくからだ。


 密入国者は、どの国も「犯罪者」となる。


 正規手続きをとらないことで、様々な弊害が起きる。





 

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