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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十章 ルーフェンスの巫女
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81.シンという男 23


 アブルード国「ラセンタ」街はルロン海国と隣接する街だ。


 海国と近いので海鮮物の取引が盛んだ。


 同時に。


 年に一回、ラセンタと隣接するルロン海国「イレック」市と合同で三日に及ぶ祭りが行われる。


 祭りの日のラセンタとイレックは、人々で溢れかえる。


 行き交う人の多い――細部に目の届きにくい時期を狙って国を越えよう。


 それがシンの提案だった。


 そうした祭りも国境の状況も知らないフィーナ達は、反論などあるはずもなく、提示された案に賛同した。


 提案に賛同した面々に、シンは真剣な面持ちで注意事項を説いた。


 人が多い。


 それは他者に紛れる利点がある反面、互いを見つけにくい欠点でもある。


 加えて戦闘になった際、他者を危険に巻き込む可能性もある。


 重い口調のシンに気圧されながら、フィーナ達はアルフィードと合流し、国境を越える作戦を詰めていった。


 フィーナ達は先にラセンタに到着し、準備をしている。


 事前に街の地理を把握し、連絡方法の確認しあっていた。


 アルフィードとシンは、後で合流する手はずとなっていた。


 シンは祭りに参加する業者に扮している。


 荷馬車の荷物に隠れたアルフィードは、前にシンが申し訳ない顔をした理由を身をもって味わった。


 我慢できるが、体を屈した体勢が続くと辛い。


 ラセンタに着くと、人気のない雑木林で荷馬車側で野宿となった。


 濃紺のアルフィードの髪色は、アブルードでは珍しいので人目を引く。


 目立たないよう配慮しての野宿だ。


 荷箱から出たアルフィードは、きしむ体を動かしてほぐす。


 旅慣れたシンは、手早く火を起こして簡単な食事を準備した。


 全てをシン任せになっている。


 申し訳なさを感じたが、アルフィードが気づいて手伝おうとする時には、シンは作業を終えている。


 何かできることはないかと聞いても、シンは「大丈夫大丈夫」と手をヒラヒラ振って断った。


 夕食は、火でパンと干し肉を炙ったものと、スープだった。


 スープはすりつぶしたトウモロコシと牛乳を混ぜ、調味料で味を調えた物だ。


 暖かなスープに、アルフィードは安らぎを感じていた。


「懐かしい……」


 ドルジェではよく飲んでいたが、王都で暮らすようになってからは飲んでいない。


 王都にはないようだ。


(これもフィーナの「適当料理」だったっけ)


 フィーナは時々、思いつきで料理を作る。


 ハズレもあれば、驚くほど美味なものもあった。


 トウモロコシのスープは「おいしい」部類のものだ。


「そうか? 見よう見まねで作ってみたんだが」


 言いながら、スープに口をつけたシンは「場所が場所だから、こんなもんか。もっとコクととろみが欲しいけど」とつぶやく。


 見よう見まね――フィーナのスープを飲んだのだろうか。


 思いながら、スープを飲み干したアルフィードに、シンがこれからの話をする。


「明日、妹さん達と合流する」


 いよいよだ。


 大詰めの話に、アルフィードは我知らず息をのんだ。






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